厚生労働省は10月17日、診療行為ごとの医療費を記載する明細書を患者が希望する場合、発行に伴う実費徴収を認めた上で、医療機関に発行を義務付ける方向で検討に入った。医療機関におけるレセプトオンライン請求の実施体制などを踏まえながら段階的に義務化したい考えで、既にオンライン請求を実施している400床以上の病院については2008年4月からの義務化を目指す。今後、中央社会保険医療協議会(中医協)による議論を踏まえて義務化するかどうかを正式に決める。 明細書発行の段階的義務化の方向は、17日に開かれた中医協基本問題小委員会で厚労省が提案した。同省の見直し案によれば、第1段階として08年4月から義務化するのは、レセプトコンピューターによるオンライン請求を既に実施しているなど「一定の条件」を満たす400床以上の病院。今年10月時点で376施設が該当する。
これらの病院は、レセプト請求が完全オンライン化される11年度に先立って08年4月からオンライン請求が義務付けられることが決まっており、「明細書を発行する基盤は整備されている」と判断した。
今後、患者から明細書の求めがあった場合に、実費徴収を認めつつ発行を義務化する方向で検討する。
レセプトのオンライン請求は、医療機関の整備状況や月ごとの請求件数などを踏まえながら11年度までに段階的に義務化されることが既に決まっており、厚労省は明細書の発行についても、これに合わせて順次、義務付けたい考えだ。
医療行為や薬、検査などの医療費を記載した明細書の発行を巡っては、06年に実施された前回の診療報酬改定に向けた議論でも義務化の是非が焦点になった。しかし、負担増を嫌う医療側の反発もあって最終的に見送られ、明細書を求める患者に対して「発行に務めなければならない」という努力義務を課すにとどまった。
また、前回改定で新設された「電子化加算」では、必ず満たさなければならない「必須要件」(3項目)に上乗せし、いずれかひとつのクリアを求める「選択要件」(10項目)を設定。このうち選択要件のひとつに「患者から求められた時に明細書を交付する体制を整えていること」が組み込まれた。
ただ、中医協が昨年11月に実施した調査結果によれば、患者の求めに応じて明細書を発行している医療機関は全体の55.0%どまり。
また、この時の調査では明細書を発行する医療機関の75.4%がその旨を院内掲示などで患者に周知していないことも分かり、関係者からは「発行していることを知らなければ請求しようがない」などの指摘も挙がっていた。
このため今後は、オンライン請求を既に実施している医療機関が明細書発行の体制整備をクリアして「電子化加算」を算定する場合に、その旨の院内掲示を義務化することも検討する。
一連の見直しは、患者にとって分かりやすく、生活の質の向上(QOL)を高める医療を実現するのが狙い。厚労省は、中医協での審議を踏まえて正式な方向を固める方針を示しており、今後はコスト負担増を避けたい医療側からの反発が強まる可能性もある。
更新:2007/10/17 キャリアブレイン
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