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リタリン:厚労省きょう対策部会 風祭元・帝京大名誉教授に聞く

 ◇「うつ」適応外は当然--避けたいが…法規制も選択肢

 うつ病などに使われてきた向精神薬リタリンを安易に処方する医師の問題が明らかになり、厚生労働省と製造・販売元のノバルティスファーマ(東京)は、うつ病を適応症から外し、処方できる医師や医療機関も登録制にして流通管理を徹底する方針を打ち出した。具体策を話し合う同省薬事・食品衛生審議会の部会が17日に開かれるのを前に、風祭元(はじめ)帝京大名誉教授(精神薬理学)に問題点を聞いた。【精神医療取材班】

 --うつ病が適応症から外されるが。

 ◆一日も早く実現してほしい。インターネットの普及で、90年代の末からリタリンをやせ薬や覚せい剤代わりに乱用する情報や、患者の求めに応じて処方してくれる医療機関名がはんらんするようになった。今では副作用の少ない新しい抗うつ薬があり、乱用の広がりを考えれば、適応症から外すのは当然だ。

 --旧厚生省の中央薬事審議会の委員として98年の適応症見直しにもかかわっているが。

 ◆それまでは軽いうつ病にも使われていたが、審議会で「難治性」などの重い症状で、他の抗うつ薬と併用する場合に限定した。製薬会社は当時からうつ病を適応症から外したい意向を持っていた記憶がある。

 --なぜ適応が残されたのか。

 ◆リタリンは58年発売の古い薬で、80年代以降はうつ病に対して科学的な証拠に基づいた治験(臨床試験)報告もなく、うつ病への適応は必要ないのではと考えた。しかし「臨床経験上効く」との意見もあり、当時は依存症に関する症例報告もほとんどなかったので、結局しばりをかけて残すことでまとまった。

 --今でも患者や医師の一部には「リタリンは効く」との声があるが。

 ◆80年代までは、入院患者がよくならない時に抗うつ薬として使うことはあった。しかし、新薬が開発されている現在では、抗うつ薬としてのリタリンの適応は臨床的にないと断言していい。

 --流通管理の徹底で十分か。

 ◆乱用が防げなければリタリンの規制法をつくることも選択肢。しかし適応症として残るナルコレプシー(睡眠障害)には有効性が確認され、乱用者もいない。治療への影響を考えれば法規制は避けるべきだ。むしろ処方する医師の資格を限定し、調剤薬局でのチェック機能を強化すべきだ。

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 ■人物略歴

 ◇かざまつり・はじめ

 東大医学部卒。帝京大医学部精神科主任教授を経て94~01年、東京都立松沢病院長。81年に東京都江東区で起きた深川通り魔殺人事件など、薬物依存関連の刑事事件の精神鑑定も多数手がけている。73歳。

毎日新聞 2007年10月17日 東京朝刊

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