2007-10-10
■[経済] 朝日社説「消費者物価指数は信用ならない。アンケートの方が正しい」 
10月8日付の朝日社説より(http://d.hatena.ne.jp/arn/20071010#p1 経由)。
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ところが、経済指標にこの値上がりがすぐには反映されない。全国消費者物価指数(生鮮品を除く)は8月まで7カ月連続で前年同月比マイナスだ。
一方では、日本銀行が先週発表した生活意識アンケートで、6割の人が1年前に比べて物価が「上がった」と答えている。生活実感と経済指標がかなり食い違ってきている。
国がそれなりにコストをかけて調査し算出した指数より庶民の体感の方が正しい、と言いたいのだろうか。ほほぉ。
消費者物価指数には落とし穴がある。
下落の最大の要因は、薄型テレビやパソコン、デジタルカメラなど技術革新が速いデジタル製品の指数が、1年前より2〜3割下がっていることだ。製品の性能が向上すると「価格下落」とされることがあるのだ。たとえば、性能が2倍となったパソコンの新製品が旧製品と同じ10万円で売られたら、指数では半分の5万円へ下落とみなされる。
製品の寿命が短かく、同一の製品の価格を追跡調査できない場合には品質調整が欠かせない。でないと、例えば箱単価は同じでもポッキーの量が増減したような場合に正しくインフレ・デフレを判定できない。
とはいえ、薄型テレビのような性能向上が著しい製品では、1台当たりの購入金額はどんどん上昇しているのに、品質調整を行った結果の物価指数は逆に低下するという状況があるのは確かである。
では、そういった「技術革新の速いデジタル製品」の影響を除いた物価指数を出してみて、物価が上がっているか下がっているかを調べてみればいいのでは?というわけで計算してみた。
2006年7月の物価と、2007年7月の物価を比べることにする(データは統計局のこのあたりからたどれる)。
テレビ、パソコン、デジタルカメラなど性能向上の著しい製品は「教養娯楽関係費」というカテゴリーにまとまっているので、このカテゴリーを丸ごと除いて比べてみれば良い。
結果はこうなった。
項目 | 2006年7月 | 2007年7月 | 変化率 |
---|---|---|---|
生鮮食品を除く総合(a) | 100.1 | 100.0 | -0.1% |
食料とエネルギーを除く総合(b) | 99.6 | 99.1 | -0.5% |
(a)から教養娯楽関係費を除く | 100.2 | 100.3 | +0.1% |
(b)から教養娯楽関係費を除く | 99.7 | 99.4 | -0.3% |
というわけで、上昇の著しいエネルギー価格を含めた状態でかろうじてプラス0.1%のインフレ率になるだけ。食料とエネルギーを除いたもので行くとやはり-0.3%のデフレであった。
国内経済に対する影響でいうと、輸入がそのほとんどを占めるエネルギー価格の上昇はインフレではなくデフレ圧力となるので、通常は除くエネルギーを見るべき。さらに、韓リフ先生のところで以前指摘があったように日本の消費者物価指数は1%程度の上方バイアスがあるので、エネルギー価格を含めた指数でも本当のところはマイナスだろう。
というわけで本石町のみなさん、テレビやパソコンの価格を除外しても日本はまだまだ立派なデフレなので、ゆめゆめあわてて利上げに走らないでくださいね。