秋の味覚の王者マツタケ。岡山県は全国2位の産出量を誇るが、今年は店頭での初お目見えが大幅に遅れ、出荷量も激減している。有数の産地である県北部の残暑と少雨が大きく影響。中国産の売れ行き低迷もあり、県産マツタケの需要と希少価値が高まっている。 岡山市中央卸売市場(岡山市市場一丁目)の今年の県産マツタケ初競りは9日。例年より2週間ほど遅く、同市市場事業部は「これほどの遅れは記憶にない」と話す。 15日までの取引量は合計10キロ程度。前年同月の1400キロに遠く及ばず、記録的不作だった02年の97キロを下回る可能性も出てきた。 単価(100グラム)は、前年同月の2倍以上で推移。初日の高値は約1万円、15日は約1万5千円と値は上がる一方。同事業部は「県北からほとんど入ってこない。卸売会社も数量を確保できず困っている」と漏らす。 店頭でも例年より高値で推移する。天満屋岡山店(同市表町2丁目)は9日、例年より2週間以上遅く30グラムが入荷。単価は1万2600円だったが、15日は2万円と今年の高値を更新。4万円台の木箱に入ったマツタケも並ぶ。 スーパーマーケットのマルイ(津山市一方)では、津山産を例年より約10日遅い5日から販売開始。単価は6600円と少し落ち着いたが、例年より2割高め。まだ一回り小ぶりで、今後の生育に期待を寄せる。 高級料亭などでは他県産で対応するところもある。日本料理のはむら柳川店(岡山市野田屋町1丁目)は、9月末から長野県産を仕入れている。岡山県産は今も入りにくく、価格も高騰し過ぎてやや敬遠気味。寒くなり始め「マツタケの土瓶蒸し」など需要は例年通りの動きという。 県産マツタケ不作の現状について、きのこアドバイザーの藤原直哉県林業試験場研究員は「9月の猛暑と少雨がすべて。今月に入って気温は下がったが、まとまった雨が続かないと菌が繁殖しない」と、10月の天候も理由に挙げる。 今後は「地中の温度が下がっているが、暖かくなって雨が降らない限り、月末に数キロ程度の収穫でシーズンを終えることもある」と厳しい見通しを示す。 また、今年は外国産マツタケにも影響が及んでいる。 マルイは9月中旬から一時的に中国産を販売。品質証明を添付して「安全」をアピールしたがさっぱり売れず、同月下旬にカナダ産などと入れ替わる形で販売を打ち切った。 天満屋岡山店は、韓国、カナダ産を用意したが「品質で定評のある韓国産も含め、輸入物は今年に限れば今ひとつ」と心配顔。ただ国産の約8割は売れており「外国産の敬遠で国産にシフトしている」と分析する。 同中央卸売市場でも中国産は値崩れしており、単価は昨年10月に約1180円だったが、今年は約865円と低迷している。