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最近、サブプライム問題がニュースで話題になっているせいで、このブログの訪問
者が増えました。ニュースでは先行き不透明とばかり言っていますが、私は問題
はまだまだ拡がると思っています。
過去の記事を見て頂ければわかると思いますが、どういう事がアメリカ経済の問
題なのか、アメリカに住む立場から見て頂ければ、不透明感が拭われるかもしれ
ません。
これが、2006年6月29日の私の記事。
アメリカに住んでもう6年半。もうそろそろ家を買いたいと2年位前から考えはじ
めた。しかし買えない。というより今すぐには買わない方が良いと判断した。日
本でももうニュースになっていると思うけれど、日本とドイツを除くほとんどの
主要国の主要都市で住宅の高騰が起きた。日本のバブル期と同じく低金利と「不
動産価格は絶対に下がらない」神話、それに加えてベビーブーマーの定年後の別
荘先買いブームがこの現象を引き起こした。だが金利が上昇してきた今、とうと
う売れなくなって、価格が下がり始めたようだ。少なくともこの辺りでは。私と
S君は納得いく市場になったら買うつもりなので、今のところ笑って見ていられる
が、これは大不況になるかもという懸念もある。と言うのは、アメリカ人の家計
に問題が多いからだ。
1)消費に頼った経済。日本は経済成長がバブルを支えていた。アメリカの場合は
ITバブルの後、投資先が住宅にすり代わっただけだ。住宅高騰にともない、家を
持っている人達が「お金持ち気分」になって消費が増えて一見景気が良いように
見えるだけ。そんでこの消費が世界経済、特にアジアの経済を支えている。日本
も巻こまれる可能性大。
2) Two Income Trap。アメリカは基本的に共働きだから、住宅ローンも共働きの
収入で組めるわけだけれど、実際は子育て、病気、失業、離婚等がやっぱりある
から丸々2 人分、目一杯で組むと後で大変になる。でもかなりの若いカップルが
これをやってしまう。収入の半分以上が住宅に消える家庭も少なくない。大学出
て、一生懸命働いてたくさん稼いでいるのになぜか生活が楽にならないTwo Income
Trap家庭が増えている。
3) 車社会のつけ。アメリカは車社会と言うけれど、S君と私は車社会の罠にはまら
ないように相変わらずポンコツ車1台、週末とスーパーに行く時だけ運転で生活し
ている。なぜ罠かって?アメリカの平均家庭は収入の20%近くを車に使ってしまう
のだ。そしてガソリン価格が上がるにつれ、%は上がっていく。計算したら、郊外
に住んで都市に通勤するよりも都市に住んでいる方がずっと経済的と分かった。
しかし、ほとんどのアメリカ人は車無しでは暮らせない郊外に住んでいる。この
費用を削るのは相当大変だ。いくら新エネルギーの車が出たって、それを2、3 台
買うのにまた相当なお金がかかるわけだ。アメリカ人は「公共交通を使うのは貧
乏人。車はFreedom。」という思い込みがあるから何がなんでも運転する。たとえ
その為に自分が貧乏になってもね。そしてこの車社会が肥満問題(何と成人の3割
が肥満)も起こしている。肥満は成人病を増やし、保険料を引き上げる。
また、車社会は地元のスモールビジネスを潰し、モールや大型チェーン店ばかり
生き残るシステムをつくった。しかしモールや大型チェーン店が実際に売り上げ
で儲かっているのかは怪しい。カンだけど違うような気がする。。。最近バタバ
タ縮小したり潰れ始めた。最初は地元の安売りチェーン店が潰れ始めた。今はK
-MartやToysrusも消えている。Filene'sという有名デパートも閉店。オンライン
ショッピングやTargetのせいかな?とも思ったけれど何か変。モールの中にも空
店舗が目立つ。なんだろう?これから注目。
4) ゼロ貯蓄とクレジットカードの乱用。 アメリカの「Personal Saving Rate」
(貯蓄率)がとうとう去年マイナスになった。マイナスだよ。ありなの?上記の問
題に加え、ものすごーい高い大学費用、医療費と医療保険(国民保険がないから)、
高い税率なんかを合わせると貯蓄できないもも当然だけど。こうなると、クレジッ
トカードに頼ってしまう人がとっても多いのです。そしてまたこのクレジットカー
ドの利率が、悪徳サラ金か!というくらい高いのよ。だからS 君も私も毎月しっ
かり残高全額返している。ところが、最低支払い額($10とかなんだよね)だけ払っ
て、繰り越し繰り越しする人がたくさんいるのだ。限度額に近づくとまた別のク
レジットカード作り続ける。破産するまでやる。破産が多いからクレジットカー
ド会社は元とる為にさらに利率を上げる。悪循環じゃん!
住宅の高騰を利用し、自宅の価格上昇分と今まで払った元本を元手に、更に長期ロー
ンを組んで、クレジットカードの借金を低金利のローンに置きかえた人もいるみ
たいだけれど、住宅価格が上がらなければ、そんなトリックも使えなくなる。
先週のニュースによると、もうすでにマッサチューセッツ州の抵当流れ件数は倍
増し、裁判所が処理しきれない程になっているらしい。これから爆発的に増加す
るとのこと。破産件数も上昇している。
高級リゾートのマッサチューセッツ州 ナンタケット島では$1 million以上だった
マンション(日本のマンションではない。豪邸の方)の価格がナント1年で37%も下
がったらしい。
さて、これからS君と私にチャンスが巡ってくるのだろうか? それとも不況に巻
き込まれて、それどころじゃなくなるのか? どちらにしても、変化が出てきた。
おもしろくなってきたぞ。
本当におもしろくなってしまった。
ちょうど、この記事の頃でしょうか。よく、冷やかしでオープンハウスに行ったも
のです。 マサチューセッツではもう売れなくなって来ていたので、不動産屋には
焦りが見られ、家を見ても良いですか? と聞くと、どこでも喜んで色々説明して
くれました。大抵、家の写真と値段と詳細の書いた紙をくれるのですが、中には
私たちが一言も言う前に、値段の所に書きこみながら、
「あ。この値段は古いやつで、今はこれより$30,000程お安くできるようにいたし
ました。」
とか何とか言う人もいました。
ローンの例の書かれた紙をくれる場合もありました。若い層をターゲットにした
コンドミニアムなんかでは特にくれました。
そして、笑っちゃうのがここです。
そのローンの例には、一つも普通の20%頭金の例が載っていないのです。
まず基本的にその紙の一番上に載っているのは、頭金が10%の場合の計算です。
あんだけ値上がりすると、初めて家を購入する人で20%払える方が少ないのでしょ
う。もちろん計算の詳細や隠れた費用なんか書いていません。
お約束の、たったのこれだけで月々いくら!っていう宣伝です。
最近は20%の頭金があっても、そんなに現金を使うのは嫌だという人も多いのです。
「クリエイティヴな」ローンを組んだ方が得だと考える人がたっくさんいます。
だから、サブプライム=低所得者=一部のバカの問題、というのは間違いなのです。
頭金が20%に満たない場合は、貸し手側を守るために、借り手側がPrivate Mortgage
Insuranceという保険を払うことになります。PMIはローン総額の0.5%程(年間)かかります。
けっこうな額です。元金返済と頭金と合わせて20%に達したら、PMIをキャンセル
することができます。どうしても頭金が足りなくて、家が欲しい場合、20%に達す
るまでどうにか頑張れそうなら、まあいいだろうといいうわけです。
もちろん、頭金20%無いのに貸してもらうわけですから、これをやるにはまあまあ
の信用度は必要となります。
ところが、実際は、2、3年で転売を考えている人ばかりですので、頑張ろうとさ
えしません。そこで、少しでも月々の支払いを下げようと、このPMIを避け、頭金
までローンにする方法に人気が出ました。80/10/10とか80/15/5とか80/20とか言
われる方法です。俗にPiggyback Loanと言われます。80が1つ目のローンの割合、
真ん中の数字が2つ目のローンの割合、そして右の数字が頭金の割合です。80/20は
頭金無しです。2つ目のローンは変動になる事が多く、また金利も1、2%は高くな
ります。それでも、月々の支払いしか見ない人はこれにしてしまうのです。ロー
ンの利息支払いは税金控除に使えるからという言い訳の人もいます。
そこそこ信用のある人なら1つ目のローンを固定にすることもできるかもしれませ
んが、こんなのに手を出す人の多くは、最初の2、3年間だけ金利が低くされた
変動金利で組んじゃう場合が多いのです。
まあ色々な信用度の商品があるのでしょうが、こういうのの一番質の悪いところ
をサブプライム、ちょっとはマシだけれど、似たりよったりのものをAlt-Aとか言っ
ているわけで、プライムでも家の価格が下がればやばそうな人がゴロゴロいるん
です。
つまり、今はまだローン問題の氷山の一角が出てきただけです。
決して悲観的になっているわけではありませんが、普通の30代サラリーマンカップルの
アメリカ生活経験からして、
どう考えても、何かがおかしい。
のです。
皆さんはどう感じていますか?
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