【エルサレム前田英司】トルコ政府は15日、同国からの分離独立を掲げるクルド系武装組織「クルド労働者党」(PKK)を掃討するため、潜伏拠点のあるイラク北部への越境攻撃の承認を国会に申請した。17日にも採決の見通しだが、政府、軍部とも早急な行動開始には慎重な見方も示している。イラクのハシミ副大統領が16日にトルコを訪問する予定で、こうした会談の成否が今後の動向を左右しそうだ。
AFP通信などによると、トルコ政府報道官は15日、国会への承認申請について「我が国はテロという厳しい現実を抱えている」との認識を示す一方で、「(攻撃が)不必要であるよう願っている」とも述べた。
PKKによるテロの激化で、世論からは掃討実施の要求も高まっているが、エルドアン首相は「国会の承認を得たからといって、すぐにあらゆる事態が起きるわけではない」と慎重に判断する必要性を強調。軍高官も「行動時期や規模について話すのは時期尚早だ」と語った。政府報道官によると、承認されれば1年間有効で、複数回の越境攻撃に適用可能という。
米国は越境を強行しないよう、トルコに抑制を呼びかけている。しかし先に、米下院外交委員会が第一次大戦期のオスマン・トルコ帝国によるアルメニア人迫害を「大虐殺」と認定する決議案を可決したことで、トルコ国内では対米感情が悪化しており、影響力にもかげりが出始めている。
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