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「被害者のスカート繊維が付着」植草被告への判決要旨(4) (3/4ページ)
6 (1) これに対し、弁護人は、被害者が痴漢被害に遭っていた際、被告人が立っていたのは進行方向右側の真ん中ドア寄り、進行方向寄りのつり革がある辺り。被害当時に被害者が立っていたと認められる位置の右後方であり、被害者の背後に立っていたのは被告人とは別の真犯人であって、真犯人は、被害者が痴漢行為に抗議しようしてヘッドホンを外す動作に気付き、危険を察知して右後方に2、3歩、後ずさりして、人と人との間に紛れたが、一方、被害者の右後方にいた被告人が、被害者の抗議に反応して、いったん被害者に注目したものの、右に顔を背けるような動作をしたことから、被害者が不審を感じて、被告人を真犯人と取り違え、目撃者も、被害者が抗議している被告人こそが自分が目撃した犯人に違いないと考えて、被告人と真犯人を取り違えた可能性を指摘して、被告人は、本件の犯人ではないと主張する。
この点、後述のように、弁護側証人は、本件犯行時間とされる午後10時8分ごろから午後10時10分ごろまでの間、被告人の様子を見ていたが、痴漢行為はしていなかったと供述し、被告人も、本件当時、飲酒による酩酊のため眠ったような状態であったから記憶のない部分もあるが、痴漢行為は絶対にしていないと述べるところ、その弁護側証人や被告人自身でさえ、弁護人の主張する別の真犯人の存在は、供述していない。
その他、関係証拠上、真犯人の存在は全くうかがわれず、弁護人が独自の推論に基づいて可能性を指摘するものに過ぎず、前記の各証拠に基づく認定事実を全く揺るがすものではない。この点に関する弁護人の主張は採用できない。
(2) 次に、被告人は痴漢行為をしていなかったとする弁護側証人の供述の信用性を検討する。
ア 弁護側証人の供述の要旨は次のとおりである。すなわち、本件当日品川駅から本件車両に乗車してすぐに被告人がいることに気付いた。進行方向左側の真ん中ドアから進行方向へ2人目の座席に着席して、品川駅から青物横丁駅ぐらいまで被告人を見ていたが、被告人は酒に酔い疲れた様子で右手でつり革につかまり下を向いて揺れており、痴漢行為はしていなかった。
被告人の周りに女性がいた記憶はなく、当然密着もしていなかった。青物横丁駅を過ぎたあたりから目をつむってうとうとしていたところ、大森海岸駅を過ぎたあたりで、騒ぎが起きた。自分の右前に立っていた逮捕者が動く気配がして、反対側座席の方向へ向かっていき、見ると、被告人を押さえつけていた。
うとうとする前、被告人がつり革につかまって揺れていたのを見ていたので、人にぶつかるなどして車内暴力を受けているのかと思った。「子供がいるのに」などという女性の声は全く気付かなかった。その後、逮捕に協力した者が押さえるのに加わり、被告人は、蒲田駅までずっと2人に押さえ込まれていた、本件車両内の混雑状態は、ドア近くのスペースは、多少人と人が触れ合うかもしれないが、それ以外はまばらだった。