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「逮捕直後『間違いない』」 植草被告への判決要旨(3) (1/3ページ)
なにより、各自の本件車両内での立ち位置については、それを正確に記憶した上、さらに的確に表現することには限界があると言わざるを得ず、あいまいな点があったり、些細(ささい)なずれが生じてくるのはやむを得ない面がある。
目撃者と逮捕者が、公判で供述したのが、それぞれ本件から3カ月余り、半年あまりたった後であり、相当な時聞が経過していたことからすれば、なおさらである。この点についての弁護人の主張は採用できない。
そして、目撃者は、痴漢行為時点における犯人の姿を見ていたのみではなく、その後も継続して、蒲田駅で被告人らが下車するまでの過程で、被害者から抗議を受けたり、逮捕者からネクタイをつかまれたりした人物の姿も目撃しているのであり、かつ、この人物が被告人であることは証拠上明らかであり、争いもない。
弁護人は、目撃者が、被告人の眼鏡やかばん、傘を覚えていないのはおかしい、被告人の顔や体格がやせていることに気付かないのは不自然であるなどの理由で、目撃者が見たという痴漢行為時の男は、被告人ではなく、眼鏡を掛けていない、かばんや傘を持っていない別のやせた人物である旨を主張するのであるが、目撃者は、本件時における被告人の姿形、所持品等について、痴漢行為時とその後について分けて述べているわけでもなく、弁護人がこうした理由で、目撃者が見た人物が痴漢行為時においてのみ被告人ではないと主張するのは強弁といわざるをえない。
弁護人は、その主張を整合させようと、目撃者と逮捕者が各供述する被告人の位置が異なっていることを理由に、目撃者は犯人が後退した後その姿をいったん見失ったとするのであるが、位置の異動については前述のとおりであるし、そもそも目撃者は犯人の姿を見失ったなどとは一切述べておらず、また、当時の混み具合からして、痴漢騒ぎが起こった後に犯人を見失うというのも考え難く、弁護人の推論に過ぎない。
その他、弁護人の述べるところは目撃者の供述中の些細なことを論難し、独自の推論を組み立てているに過ぎず、目撃者の供述の信用性を下げるものでは全くないし、推論も合理性を欠いており、その主張を採用することはできない。