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【植草被告判決要旨(4)】被害者のスカート繊維が付着

10月16日12時51分配信 産経新聞


  オ 以上のように、被告人が、本件直後、被害者や逮捕者らから犯人扱いされても、痴漢行為を否定するような言動をほとんどとらなかったばかりか、被害者の抗議に対し、手を顔の前に挙げて、頭を下げるなど謝罪するような態度をとったり、駆けつけた警察官に対し、痴漢行為を認めているといえる言動をとっていることは被告人が犯人であることを強く推認させる事情といえ、被害者および目撃者の各供述の信用性を支える。
 この点、弁護人は、本件車両内で、被告人が声を出して反論していないことについて、被告人は、自分が有名人であり、以前にも事件に巻き込まれたことがあったので、大きな声を出して注目が集まると、被告人であることに気付かれ騒ぎになってしまうことなどを恐れたからであると主張し、被告人もこれに沿う供述をする。
 しかし、被告人は、同車両内で、単に反論しなかったにとどまらず、被害者の抗議に対し、失礼というような感じで手を顔の前に挙げて、被害者に対して頭を下げるなど謝罪するような態度をとったり(この点、弁護人は、被害者が被告人を犯人であると思い込んでいるために、被告人がかかわり合いになりたくないと思って下を向くなどしたしぐさから過剰な意味を読みとったにすぎないとしているが、被告人が手を顔の前に挙げたことについては、目撃者と逮捕者においても、被告人の意識的な行為ととらえているし、単に下を向くことと2、3回頭を下げることは明らかに異なる行動といえる)、駆けつけた警察官に対し、「女性に不快感を与えるようなこと」をしたと痴漢行為を認めているといえる言動をとっているのであって弁護人の主張はその前提において誤っている。<page/>

 また、弁護人は、被告人は、被害者の誤解を解くために被害者と話をしようとしていたのであり、話ができないことが分かると、逮捕されれば有罪と決めつけられ、家族に迷惑がかかるなどと考え、これらの重圧に耐えかねて自殺を図ったと主張するが、それらの行為はいずれも被告人が犯人であるとしても矛盾する行為とはいえない。

 (2) 被告人の指から採取した付着物に、被害者のスカートの構成繊維である強い青色獣毛繊維と類似した色調の獣毛繊維が付着していたこと、付着していた繊維は被告人の背広の構成繊維と異なること、被告人のネクタイの付着物に、同スカートの構成繊維である明るい青色獣毛繊維と類似した色調の獣毛繊維、さえた青色獣毛繊維と類似した色調の獣毛繊維、強い青色獣毛繊維と類似した色調の獣毛繊維が付着していたこと、付着していた各繊維は被告人の背広の構成繊維とはいずれも異なることが鑑定されており、これらの事実は、被告人が被害者の背後に密着し、そのスカートに触れたことと矛盾せず、被告人が犯人であることに矛盾しないといえる。
 もっとも、これらの付着していた各繊維は前記スカートに由来すると判定されたものではなく、他に由来する可能性も否定できるものではない。よって、前記鑑定結果は、被告人が犯人であることに矛盾しないという限度でのみ、被告人が本件の犯人であるとする被害者および目撃者の各供述の信用性を支える事情の一つとなる。

 5 以上より、被告人が本件の犯人であるとする被害者および目撃者の各供述の信用性は高く、関係各証拠から、以下の事実は優に認められる。

 (1) 本件車両において、被害者は同車両の真ん中に当たるところから進行方向に1歩進んだところに、進行方向を向いて立ち、被告人はそのすぐ背後に同方向を向いて立っていた。目撃者は、被害者の方向を向いて、被害者の左横約77センチメートル離れた位置に立っていた。逮捕者は被害者と被告人の左前方の座席の前に窓を向いて立っていた。車内は、体が触れ合うほどではないが、ある程度混雑していた。

 (2) 電車が動き出した直後、被告人は、被害者の臀部付近の側面を着衣の上から、両手のひらで触った。そして、すぐに左手で左の臀部付近を、なで回し始めた。
 その間、右手は動かさなかったが、左手の動きを止めると、続いて右手で同じようになで回した。
 その間、被害者は助けを求めようとそばにいた目撃者に2、3回ほど視線を送り、目撃者はそれに気付いたが、何もしなかった。
 その後、被告人は、右手で被害者のスカートをたくし上げ、下着の上から、その臀部付近をなで回していたところ、被害者が、右回りに振り返って、「やめてください」といった。<page/>

 6 (1) これに対し、弁護人は、被害者が痴漢被害に遭っていた際、被告人が立っていたのは進行方向右側の真ん中ドア寄り、進行方向寄りのつり革がある辺り。被害当時に被害者が立っていたと認められる位置の右後方であり、被害者の背後に立っていたのは被告人とは別の真犯人であって、真犯人は、被害者が痴漢行為に抗議しようしてヘッドホンを外す動作に気付き、危険を察知して右後方に2、3歩、後ずさりして、人と人との間に紛れたが、一方、被害者の右後方にいた被告人が、被害者の抗議に反応して、いったん被害者に注目したものの、右に顔を背けるような動作をしたことから、被害者が不審を感じて、被告人を真犯人と取り違え、目撃者も、被害者が抗議している被告人こそが自分が目撃した犯人に違いないと考えて、被告人と真犯人を取り違えた可能性を指摘して、被告人は、本件の犯人ではないと主張する。

 この点、後述のように、弁護側証人は、本件犯行時間とされる午後10時8分ごろから午後10時10分ごろまでの間、被告人の様子を見ていたが、痴漢行為はしていなかったと供述し、被告人も、本件当時、飲酒による酩酊のため眠ったような状態であったから記憶のない部分もあるが、痴漢行為は絶対にしていないと述べるところ、その弁護側証人や被告人自身でさえ、弁護人の主張する別の真犯人の存在は、供述していない。
 その他、関係証拠上、真犯人の存在は全くうかがわれず、弁護人が独自の推論に基づいて可能性を指摘するものに過ぎず、前記の各証拠に基づく認定事実を全く揺るがすものではない。この点に関する弁護人の主張は採用できない。

 (2) 次に、被告人は痴漢行為をしていなかったとする弁護側証人の供述の信用性を検討する。

 ア 弁護側証人の供述の要旨は次のとおりである。すなわち、本件当日品川駅から本件車両に乗車してすぐに被告人がいることに気付いた。進行方向左側の真ん中ドアから進行方向へ2人目の座席に着席して、品川駅から青物横丁駅ぐらいまで被告人を見ていたが、被告人は酒に酔い疲れた様子で右手でつり革につかまり下を向いて揺れており、痴漢行為はしていなかった。
 被告人の周りに女性がいた記憶はなく、当然密着もしていなかった。青物横丁駅を過ぎたあたりから目をつむってうとうとしていたところ、大森海岸駅を過ぎたあたりで、騒ぎが起きた。自分の右前に立っていた逮捕者が動く気配がして、反対側座席の方向へ向かっていき、見ると、被告人を押さえつけていた。
 うとうとする前、被告人がつり革につかまって揺れていたのを見ていたので、人にぶつかるなどして車内暴力を受けているのかと思った。「子供がいるのに」などという女性の声は全く気付かなかった。その後、逮捕に協力した者が押さえるのに加わり、被告人は、蒲田駅までずっと2人に押さえ込まれていた、本件車両内の混雑状態は、ドア近くのスペースは、多少人と人が触れ合うかもしれないが、それ以外はまばらだった。<page/>

 イ まず、弁護側証人の供述によると、同人は大森海岸駅を過ぎたあたりで被害者が痴漢の被害を訴え出て、逮捕者が被告人を押さえるなどして車内に騒ぎが起きたのに気がついたとする点は、品川駅から蒲田駅間は快速特急で10分間余りかかることおよび通過駅は9駅であり、大森海岸駅は品川駅から6駅目であることにかんがみれば、品川駅発車後間もなく騒ぎになったとする前記被害者、目撃者、逮捕者の各供述(被害者は、被害を受けた時間を発車直後から2、3分間と述べ、目撃者は、被告人が被害者の臀部付近を触っているのを目撃したのは発車1、2分後であり、触っていた時間は2分間くらいだったと述べ、さらに逮捕者は、被害者が「やめてください」との声をあげたのは品川駅を出て2、3分くらい後であり、声がしてから逮捕者が被害者のもとに移動するまでは1分間くらいとする旨述べているところ、これら述べる時間はすべて感覚に基づくものであって、言葉通りに直接認められるものではないが、品川駅発車後間もなく騒ぎが起きたとする点では一致している)だけでなく、品川駅を出てから、それほど時間のたっていないころとする被告人の供述とすら異なる。
 また、弁護側証人の供述は、それなりに大きな声で発言された被害者の「子供がいるのに」などとする言葉を聞いていない点、騒ぎの後蒲田駅到着まで、被告人がずっと押さえつけられていたとする点、本件当時に被告人のそばには女性はいなかったとする点など他の供述とことごとく異なる。
 すなわち、弁護側証人の供述は、被告人自身すら認めている動かしがたい事実と齟齬していることになり、弁護側証人が、本件車両に乗車していたことおよび本件を目撃したことの両面について相当の疑問を差し挟まざるを得ず、その供述は措信し得ない。

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最終更新:10月16日13時4分

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