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【植草被告判決要旨(2)】「子供の前ではずかしくないんですか」

10月16日12時17分配信 産経新聞


 ウ この点、弁護人は、(1)被害者が犯人の左手を確認したと供述する点については、その供述どおりの姿勢では、自己の左腕に遮られて、自己の左臀部を触っている犯人の左手やその手首に掛かった傘の取っ手を確認することが不可能であるから、被害者は視認状況を誇張して述べており、また、傘の取っ手については警察の誘導によってそう思い込んでいるにすぎないなどとその信用性を弾劾した上、仮に同供述が真実だとしても、それは真後ろにいて、かつ、茶色の木製の取っ手の傘を持った人物が犯人であると識別できたということにすぎず、そのような取っ手は珍しくなく、被告人は被害者の真後ろではなく右後ろに立っていたと主張し、また、(2)被害者が振り返って被告人が犯人であることを現認したと供述する点については、被害者の背後に立っていた真犯人が、被害者がヘッドホンを外す動作に気付き、危険を察知して右後方に2、3歩、後ずさりして、人と人との間に紛れたため、被害者は右後方にいた被告人と真犯人を取り違えたものであるとして、被害者の犯人特定経緯について疑問を呈する。
 しかし、(1)の点については、首を傾けて下を向けば、自己の臀部の側面に置かれた手や手首を観察しうることは経験則上明らかであるし、また、被害者は一連の観察を通じて犯人識別をしているのであるから、弁護人の指摘は当たらない。また、(2)の点については、弁護人の主張は、要するに、その想定する真犯人が真実に存在するという前提に立って、被害者の供述の信用性を論難するものであり、そうした真犯人の存在は、証拠上全くうかがわれず、後述の目撃者の供述にも明らかに反するものであって、その主張はいずれも採用できない。
 (2) ア 目撃者は、その目撃状況について、要旨次のとおり供述している。
 品川駅で、本件車両の真ん中のドアから乗車し、入ってすぐの広い場所に進行方向右側のドアを向いて立っていた。被害者は、目撃者から見て左である進行方向を向き、目撃者の真ん前、77センチメートルくらい離れた位置に立っていた。初めに被害者と被告人を見たとき、被害者の背後に被告人が同方向を向いて密着しており、本件車両内は、立っている乗客も多く混雑していたが、隣の人と体が触れ合うようなことなく立っていられるような状態だったので、被害者と被告人の距離には違和感を覚えた。被告人の両手ともに被害者のほうに前へいっていたが、その時点では、2人の距離や被告人の体勢に不自然さを感じた程度で、被告人が被害者に痴漢行為をしているとは思わなかった。
 電車が品川駅を発車して、1、2分たったころ、ふと見ると、被告人の左手が被害者の左側面の腰から尻にかけての辺りを触れていた。被告人の指先から袖口辺りまでが見えた。被害者のスカートに、触られたこと
によるしわができていた。見た瞬間は、痴漢の可能性はあると思ったものの、電車の揺れや混雑のせいなど何らかの事情で偶然手が触れてしまっているのかもしれないと考えて、痴漢だと確信はしていなかった。
 しかし、見極めようとしばらく被告人および被害者の様子に注目していると、その後、電車が揺れたり、被害者が自ら体を動かしたりして、被害者の体が動くというようなことがあっても、被告人の左手が離れることなく被害者の体に付いていき、2分間くらい触ったままだったことなどから、最終的に痴漢行為をしていると判断した。
 痴漢行為をしていると確信した後は、右手も左手と同じように、被害者の体を触っているのではないかと考え、実際、右腕は前に出ていたが、右手は見ていない。被告人は、少しうつろな目をしていてボーッとしたような感じだった。被害者は困感したような表情をしていて、自分のほうを見てきたため、助けを求めているんじゃないか、やめなさい、と注意しようかとは考えたが、実際には、注意して被告人が暴れたりしたら嫌だな、被害者が自分に賛同してくれなかったら困るなということも考えて、痴漢行為をやめさせるために被告人の顔を注視したくらいで、それ以上に注意することはできなかった。
 その後、被害者は、後ろを振り返り、「何やっているんですか」「子供の前で恥ずかしくないんですか」「次で降りてください」などと、被告人に対し、抗議していた。初めはき然とした感じだったが、最後のほうは涙まじりで、言い終わった後は、その場でうつむいて顔を押さえて泣き出した。
 一方、被告人は、被害者が振り向いた直後に、1、2歩後退し、進行方向右側のドアの方向を向いた。
 イ まず、目撃者は、被告人および被害者に対して何の利害関係もなく、ことさら被告人を陥れる理由もないし、ことさらに被害者に有利に供述する理由もない。また、その供述は、自分が見たことをそれぞれの時点での自らの心理状態も交えつつ具体的詳細に述べるものであること、被害者の被害状況について被害者の供述とも極めて符合すること、目撃者は視力も左が1・5、右が1・2と十分であり、被害者と被告人からの距離も近く、痴漢ではないかと疑惑を抱いた後、相当時問を注意して観察していること、また、被害者から助けを求められたが助けられなかったなど自分にとって不利なことも率直に述べるなど誠実な供述態度がうかがわれることから、その供述には十分な信用性が認められる。
 なお、目撃者が、電車が蒲田駅を発車した後、痴漢を目撃しながら何もできなかったことを悔いる内容のメールを送信したことが認められることは、その供述を裏付けるものでもある。
 ウ この点、弁護人は、目撃者が、被告人の顔を見たと言いながら被告人の掛けていた特徴のある眼鏡を覚えていないのは不自然であること、被告人の右肩が見えていたと言いながら右肩に掛けていたかばんを覚えていないのはおかしいこと、左手を見たと言いながら持っていた傘を覚えていないのはおかしいこと、その証言時、被告人の顔や体格が本件目撃当時に比べてやせていることに気付かないのは不自然であることなどを指摘して、被告人が被害者の臀部付近を触っていたのを目撃したという目撃者の供述の信用性を弾劾した上、被害者が振り返った後の被告人の立ち位置について、目撃者が述べるところと後述の逮捕者の供述内容が異なるとして、目撃者が目撃した犯人は被告人ではなく別の真犯人であり、目撃者は、真犯人が1、2歩後退してドアの方向を向いた後は、その姿を見失い、被害者が被告人を犯人と取り違えて抗議したことに影響されて、被告人を自分が目撃した痴漢犯人であると取り違えたなどと主張する。
 まず、被害者が振り返えった後の被告人の立ち位置について、目撃者は、被害者の背後に密着していた被告人が、「被害者が振り向いた直後、1、2歩後ろのほうに下がって、乗車したドアとは反対のほうのドアのほうを向いた」旨を供述しているところ、逮捕者は、被害者の「やめてください」という声を聞いて振り返ったとき、被告人と被害者の距離は51センチメートルより短いくらいで、すぐ後ろだったと述べている。
 弁護人は、これをもって、目撃者と逮捕者の述べるところが異なるとするのであるが、まず、被告人の被害者に対する方向についてみるに、目撃者は、「後ろのほうに下がった」と述べているのみであって、具体的に被告人の位置を図で示しているものではないから、これは右後方を含み得る趣旨の供述と解され、必ずしも逮捕者の供述と矛盾するものではない。
 次に、被告人と被害者の間の距離についてみるに、目撃者は「1、2歩」後退したことによって、被告人が密着していた被害者とどの程度離れたのかについては述べていないのであるから、それが数十センチであることは十分あり得ると言うべく、やはり逮捕者の供述と矛盾するものではない。そもそも、逮捕者の立っていた位置は、その供述によれば、被告人と被害者の位置から見て進行方向左側の真ん中ドアから進行方向へ2人目の座席の前であり、その位置から本件車両の真ん中に当たるところから進行方向に1歩進んだ位置にいた被害者と被告人の間の距離を正確に把握するのは難しいと推察され、実際、逮捕者自身、逮捕者からは被告人と被害者が一直線上に並ぶように見えたこと、角度的に被告人と被害者の間隔が見える角度ではないので、距離の点については、大ざっぱな印象であることを述べている。

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最終更新:10月16日12時17分

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