学会活動
「上部消化管」領域
上部消化管領域では、H.pyloriおよび関連疾患に関する研究と、早期胃腫瘍に対する内視鏡的治療に関する研究が盛んです。
本邦の大学病院では圧倒的多数の方々に、除菌療法を実施し、日本人にとって最適な治療法を確立しました。また、豊富な除菌経験を元に、効率の良い"再除菌"療法も確立しています。
治療と共にH.pylori感染診断法についても、企業と積極的に協調して、尿中H.pylori抗体測定法などの簡便で正確な新方法を開発してきました。便中H.pylori抗原測定法については本邦に最初に導入しました。更に最近注目され、生活習慣病との関わりのあるGERD(胃食道逆流症)についても基礎実験を通じ、その発生機序を含めて多方面から探求しています。
胃腫瘍の治療法として、QOLに優れる内視鏡的切除法についても毎週2回実施しています。吸引切除法を主に採用しており、手技時間も短く穿孔、出血による緊急手術、不完全切除による追加切除もほとんどなく所期の成績を達成しています。しかし、従来の適応を超える病変に対するアプローチとして最新の"粘膜切開剥離法(ESD)"も2003年から導入して更なる治療範囲の拡大、成績の向上に努めています。
「下部消化管」領域
下部消化管領域では、大腸内視鏡検査のスクリーニングの研究、早期大腸がんの研究をしております。早期大腸がんについては、陥凹型や側方に発育するLSTという病変の集積を行い、遺伝子的な異常を解析する仕事を進めております。また、数十倍まで拡大して観察が可能な内視鏡を使った内視鏡診断と最先端の内視鏡治療の研究も行っております。
炎症性腸疾患に関しては、特に潰瘍性大腸炎に対する新治療法(抗菌剤多剤併用療法)を開発しました。潰瘍性大腸炎の腸粘膜細菌の毒性を検討し、「フソバクテリウム」という細菌が原因であることを発見し、その菌に有効な抗生物質3種(2週間服用)を選び、潰瘍性大腸炎の患者さんに投与したところ、80%以上と高い有効性が得られました。この成果を科学的に実証するため、更に、多数の患者さんで有効かどうか臨床試験を行っています。潰瘍性大腸炎で悩んでいる患者さんのご来院、ご紹介をお待ちしております。
内視鏡の分野では、新しい内視鏡システムを実現するために、病変の蛍光を観察する内視鏡の研究開発を行っています。この内視鏡システムが実現すれば、生検(組織の一部分を採取すること)を行わずに、がんの部分や前がん状態の発見が可能になり非侵襲的に検査・診断が出来るようになると考えられます。
「肝臓・胆嚢・膵臓」領域
肝臓領域では、種々の急性・慢性肝疾患の診断・治療に携わる傍ら、疾病のメカニズム解明および新たな治療的アプローチを目指して種々の基礎的検討を行っています。以前からの研究テーマであるアルコール性肝障害の病態生理に関する検討に加え、近年注目されている非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の発症・進展メカニズムの解析において、国内外を通じて有数の研究グループとして高い評価を得ており、その研究成果はGatroenterologyやHepatologyなど当該分野におけるトップ・ジャーナルに掲載されています。また、細胞・分子生物学的な解析手法を駆使して、遺伝子治療や再生医療等近未来的に実用化され得る先進医療の分野に関する基礎的研究にも意欲的に取り組んでいます。
胆嚢・膵臓領域では、とくに胆道(胆嚢、胆管)、膵臓の悪性腫瘍の早期発見を目指して、以下の検査を行い、蓄積したデータを臨床にフィードバックし、各種学会に報告しています。胆道がんの診断では超音波、CTで軽微な異常を拾い上げ、精密検査として超音波内視鏡やMRCPを行っている。異常がみられた患者さんには胆汁を採取し、細胞を調べて早期発見に努めています。膵がんでは超音波、CT、MRCPを主体とし、軽微な異常がみられる患者さんには膵液を採取して細胞検査を行っています。
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