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医療現場の苦悩背景 呼吸器外し 救急医学会の決断
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突然の発病や事故によって生死の間をさまよっている患者が次々と運ばれてくるのが救急医療の現場だ。救命のための治療を全力で行うのが医師の使命であることは当然だが、一方で現場は、救命不能となった患者につけられた人工呼吸器をどうするかといった問題に絶えず苦悩してきた。
医療関係者からは「よかれと行った延命措置が、安らかな死を妨げることもあるのが現場。勝手に治療を中止すれば刑事事件になりかねない」と悩みを語る。
日本救急医療学会が15日に決定した、延命治療中止の指針はそのような現場の現実背景につくられた。
これまで日本には安楽死や尊厳死について定めた法律や指針がなかった。そのため、富山県の射水市民病院で昨年、医師による人工呼吸器の取り外しが行われ、7人の患者が死亡していたことが発覚するなど、延命治療をめぐるトラブルが絶えなかった。
指針は、対象が救急医療現場に限定されたものではあるが、医療現場の苦悩を解決することにつながるものであることは間違いない。
指針策定の中心になった昭和大の有賀徹教授は、指針の意義について「適切なチーム医療が行われることで、第3者に対する説明責任を果たすことができる」と説明している。多くの医師からは「医療行為が透明化につながる」と評価する声もあがっている。
一方で、「医療行為が安易にストップされかねない」と慎重な運用を喚起する声も出ている。学会の議論の過程では「試行期間を設けるべきだ」という意見もあった。
これらの危惧(きぐ)に対して学会事務局では「現場や社会からの声を聞きながら、指針の内容を進化させていきたい」と話している。「指針ができたから終わり」ではなく、患者の幸せのために、今後の運用状況を絶えずチェック、検討していくことが求められる。