国会で論議が続く政治資金支出の領収書公開は「一円以上」で決着する雲行きである。これでカネの透明度が保証されるといった主張が聞こえてくるが、はたしてそうか いまの白山市出身の宗教家・暁烏敏(あけがらすはや)の逸話を思い出す。ある集まりで、一人の聴衆が義憤の声を上げた。「正直者がバカを見る世の中です」。暁烏はすかさず応じた。「この中に正直者がいるなら出て来い」。バカを見る、と嘆いた当人を含め、誰一人席を立つものはいなかった 一円の狂いもない家計簿をつける主婦など、どれだけいるだろう。途方もない手間と労力がいる。身近な家計簿にして、大半は帳尻合わせがある。一円領収書を確約する政治家の言葉は、どこまで信じられるだろう 福田首相は、地元企業からの寄付金がらみで追及を受けた。小沢代表は資金管理団体の家賃収入で批判を浴びた。いずれもカネの「出」ではなく「入り」の問題である。一円領収書は、「政治とカネ」の核心ではない 国民新党の亀井代表代行は、与野党のかみ合わぬ論戦を、こんにゃく問答と皮肉った。まさしく一円論議は、食べても栄養にならぬこんにゃくに思える。
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