「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」との考えに「反対」が初めて過半数になった。一方、男女平等を実感している人は、あまり増えていない。「反対」も八−九割の欧米とは、大きな開きがある。
内閣府が発表した「男女共同参画社会に関する世論調査」によると、「夫が働き、妻は家庭」に「反対」する人は三年前の前回調査で「賛成」を上回ったが今回、「賛成」の44・8%に対し、「反対」が52・1%と過半数になった。根強かった性分業意識の改善は、一歩ずつだが進んでいるといえる。
「女性が職業をもつことについての考え」の項目で「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい」が前回から3ポイント増え、43・4%に増加した。働く女性が増えている現在、この流れは加速している。
だが「社会全体で男女の地位」が「平等」と感じている人は、前回の20・1%に対し今回は20・9%とほとんど変わっていない。一九九五年調査の19・5%に比べても、増加は1・4ポイントだった。「男性の方が優遇」と感じている人は九五年から七割以上のままだ。社会ではまだ「不平等」が実感で、意識の変化とのギャップは開く一方だ。
不平等は組織の管理職に占める女性の比率にも表れている。内閣府の自治体の女性参画に関する二〇〇七年度調査によると、課長級以上の管理職に占める女性の割合は、高かった市区町村で8・6%。都道府県では5・1%だった。
政府は男女共同参画の“推進力”にすべく策定した基本計画で、二〇二〇年までに管理職などの指導的地位に女性が占める割合を30%にするとの目標を掲げている。これでは到底、目標達成はおぼつかない。
同世論調査で「男女が平等になるために重要なこと」を聞くと、「女性を取り巻くさまざまな偏見、固定的な社会通念、習慣・しきたりを改めること」が減少傾向で、調査を重ねるごとに「女性の就業、社会参加を支援する施設やサービス充実」への要望が増えている。要望は政府の取り組みで改善できる分野だ。
民間にも努力が求められる。男女雇用機会均等法が改正され、性別による差別の禁止が徹底された。パート労働法も改正され、女性に多いパート労働者の待遇改善が求められる。これらは実現すべき最低のハードルだ。企業は自ら男女が同等に働ける環境づくりに努めてほしい。
福田康夫首相は所信表明で、この問題にも取り組む姿勢を示したことは国際社会の一員として当然で、政策の後退は許されない。
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