第六十回新聞週間が十五日から始まる。インターネットの普及などで新聞を取り巻く環境が大きく変わった。一方で、情報ははんらんし、社会に混乱を招いている。新聞の果たす役割や使命について、あらためて考えてみたい。
今年の夏、岡山市で「第十二回NIE(エヌ・アイ・イー)全国大会」が開かれた。NIEとは、教育に新聞をとの意味だ。子どもたちの活字離れや学力低下が心配されている折、学校現場で新聞を活用し、考える力を養ってもらおうとの狙いがある。
岡山大会には、NIE活動に熱心な全国の教育、新聞関係者ら約八百五十人が参加した。二日間の日程で、新聞を使った公開授業や実践発表などが行われた。
注目されたのは、東北や九州などの地方紙を使った岡山市立伊島小の南再俊教諭の公開授業だった。「自然環境と暮らしが関係する記事」を探す五年生の社会科授業で、目当ての記事を切り抜き、各地の特色ある暮らしぶりを発表した。児童は「新聞には新しい発見がいっぱいある」と話していた。発見の喜びが興味と関心を広げれば、主体的な学ぶ力につながっていこう。
実践発表では、鳥取県の高校が「自ら意見の発信者となる」をテーマに、新聞の読者欄への投稿を行った事例を報告した。生徒は社会的疑問に対する問題解決の方法を考え、多数に訴えるための工夫を勉強した。
また、新聞数紙を読み比べた学校では、同じ事件でも新聞によって扱う大きさなどが異なることを確認し、情報をうのみにせず、自ら判断する大切さを学習した例が報告された。教育現場での多様な新聞活用法に驚いた。
NIEの実践を通して、児童や生徒は進んで新聞を読むようになり、「読む、書くことが増えた」「生き生きと学習する」などの変化が見えだしたとの調査結果もある。岡山大会を通して、教育への新聞活用をさらに広げていく必要があると再認識した。
新聞各社は、インターネットの普及に伴いネット上でのニュース提供にも本腰を入れだした。山陽新聞社など地方紙を中心とする五十二社と共同通信社は全国新聞ネットを設立してニュースサイト「47NEWS」(よんななニュース)をスタートさせた。新聞の誇る情報の信頼性と全国各地の地域密着のきめ細かな話題で、ネット空間でも新聞の存在感を高めたい。
今年の新聞週間の代表標語は「新聞で見つめる社会見つけるあした」である。その期待に、紙面でもネットでも応えていきたいと思う。