前立腺がん検診の有効性を検討する厚生労働省研究班(主任研究者、浜島ちさと・国立がんセンター室長)が、「PSA(前立腺特異抗原)検査による集団検診は勧められない」との報告書案をまとめたことに関し、メンバーや研究協力者の泌尿器科医5人が研究から脱退する意向を示していることが分かった。「内容に責任を持てない」ことが理由。PSA検査による集団検診は市町村の7割が実施しており、研究班の分裂は自治体に混乱を招きそうだ。
研究班は主任研究者と分担研究者9人(うち泌尿器科医1人)で構成。研究協力者11人(同4人)も研究に参加する。脱退を表明した5人はいずれもPSA検診推奨の立場を取る日本泌尿器科学会の会員。連名で研究班に文書を送り、脱退のほか、今月末完成予定の報告書に名前を掲載しないことも求めている。
分担担当者で脱退を表明した伊藤一人・群馬大准教授は「議論は最初から結論ありきで、泌尿器科医の意見は受け入れられなかった」と話す。一方、浜島室長は「議論を重ね、経緯も報告書に盛り込まれている」と説明する。厚労省研究班メンバーの脱退は、極めて異例だという。
PSAは、前立腺の組織が壊れると血液中に漏れ出るたんぱく質。報告書案は、国内外の研究論文を評価した結果から、「PSA検査を使った集団検診に、死亡率減少効果があるかどうかを判断する根拠が不十分だ」とした。一方、泌尿器科学会はPSA検診を推奨する見解を表明し、学会独自の前立腺がん検診の指針を刊行する準備を進めている。【須田桃子】
毎日新聞 2007年10月16日 3時00分