今年7月に破産した奈良県広陵町の家具製造会社が、知的障害者11人に最大35年にわたって賃金を支払わず、障害基礎年金を横領していた疑いがあるとして、弁護団が15日、社長らに損害賠償を求めて年内にも提訴することを明らかにした。原告11人の未払い賃金と年金の横領額の総額は、数億円に上るとみている。弁護団は「(従業員が)重度の知的障害があることにつけ込んだ卑劣な行為」としている。
弁護団によると、会社には、健常者以外に、27~54歳の重度の知的障害を持つ男女11人が9~35年にわたって勤務。その間、障害者の月額約4万~8万5000円の給料はほとんど支払われず、週末に3000円ほどの小遣いが手渡された程度だった。2カ月に1度支払われる約13万円の障害基礎年金は、個人の口座に振り込まれた後、他の口座に振り替えられるなどしていた。年金受給口座用の通帳や印鑑は、役員が所持していたという。
今年5月、同社の社長が経営難を理由に、「従業員を他で預かってもらえないか」と広陵町に相談。町は障害者福祉施設「青垣園」(同県大和高田市)に伝え、同園が引き受けた。その際、1人当たりの年金用口座には約3万~5万円しかなく、弁護士らに相談し発覚した。
弁護団の主張に対し、社長は「今は話せる状況じゃない」としている。【石田奈津子、中村敦茂】
毎日新聞 2007年10月15日 22時15分