要請団、首相と面談へ/政党代表にも訴え
文部科学省が来年春から高校で使われる日本史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除した問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長ら代表団百六十七人は十五日午後、福田康夫首相や渡海紀三朗文部科学相に「検定意見撤回と記述の早期回復」を再要請する。
実行委メンバーら要請団の第一陣九十七人は十五日午前、那覇空港に続々と集まった。要請団には仲里実行委員長や副実行委員長の玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会長、県遺族連合会の仲宗根義尚会長ら県民大会の主催、共催団体関係者や県議、「集団自決」があった渡嘉敷村の小嶺安雄村長ら市町村長、市町村議会議長らが参加。一行は十五日に福田首相や渡海文科相、町村信孝官房長官の政府閣僚の三人と面談を予定しているが確定していない。十六日には複数のグループに分かれ、各政党代表や幹部、全国会議員、各教科書会社に対し「沖縄戦の正しい姿を伝える記述をしてほしい」と訴える。
要請団は(1)検定意見撤回と記述回復(2)検定結果の中立性、公平性に疑義が生じていることから速やかな教科用図書検定調査審議会の開催と必要な措置を講じること(3)審議会を公開し、透明、中立、公正性を確保、沖縄戦研究家の参加、情報の公開(4)沖縄戦に関する記述に配慮する「沖縄条項」の新設―を要望している。
出発前に仲里実行委員長は「二百人近い要請団とともに上京するのでぜひ四項目の要望を着実に実行していただきたい」と述べた。
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検定撤回 政府に届け/要請団、切実な思い胸に
「悲惨な沖縄戦の姿を正しく後世に伝えてほしい」。十五、十六の両日、文部科学省が教科書検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた問題で、検定意見撤回と記述回復を求めて十五日、上京した「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の代表団参加者は、自身の沖縄戦体験などからあふれる思いを、政府や国会に投げ掛ける。
元女子学徒隊でつくる「青春を語る会」の中山きくさん(78)は、自身も沖縄戦時、日本兵から手榴弾を手渡された。「学友の多くも、日本兵から二個の手榴弾を渡され、『一つは米兵に、一つは自分のため(自決のため)』に使うように言われていた」と証言する。
それだけに「軍の強制」を削除した教科書検定や、検定意見には我慢がならない。検定結果が明らかになった四月から署名活動を始め、実行委への参加も自ら申し出た。「記述回復は当然のこと。沖縄戦を知らない審議委員により、いいかげんに決められた検定意見が撤回され、二度と同じことが起きないようにするため、何度でも要請を繰り返す」と決意を固めている。
県遺族連合会は三日前に役員会を開き、「あの悲惨な沖縄戦の真実を後世に伝え続け、平和の希求と享受につなげるのがわれわれの目的」と、要請行動に向けての意志を再確認した。沖縄市で沖縄戦を体験した仲宗根義尚会長(71)は「『集団自決』は体験していないが、置かれた社会環境は一緒だった。慶良間諸島の人々らが、日本軍に追い詰められていった状況は容易に想像できる」と語った。
皇民化教育と、日本軍の完全支配下にあった当時の沖縄で「激しい地上戦により逃げ場を失った住民に、日本軍から手榴弾が渡された。これはまさに命令だった」との考えを、自身の体験を交えながら、東京で訴えてくるつもりだ。
「軍の強制を示した教科書記述を元通りにするのは最低限。その上で、検定意見や検定制度にもしっかり手を入れてほしい」と強い口調で話した。
代表団は、出発前、県議会議長の仲里利信・大会実行委員長の「検定意見撤回と記述回復を求めるという共通の認識に立ち、行動しよう」とのげきを受け、「所期の目的を貫徹しよう」の掛け声でガンバロー三唱をして、東京に向かった。
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