2007-10-15 18:32:41
精神障害者と欠格条項
テーマ:精神疾患
以前は、医師、看護師、薬剤師の欠格条項は厳しかったが、現在はわりあい緩やかになってきている。欠格条項は障害者の社会復帰を阻むことでもあり、また差別にも関係している。緩やかになったのは、一般社会からのニーズがあったことと、国への働きかけがあったことも大きいように思われる。
まだ欠格条項が厳しかった頃、看護学生が統合失調症に罹患していた場合、試験に合格できるだけの学力があったのにもかからず、看護師になれなかったかと言うと、そうとも言えない。
なぜなら、統合失調症の場合、客観的な誰にでもわかる証拠がないから。これは聾唖のような誰が見てもそれとわかり、しかも隠し切れない障害とはかなり様相が異なる。統合失調症は血液検査や画像診断、あるいは心理テストで、確定診断できないからである。(参考1、参考2)
僕はいろいろな病院で働いてきたが、未だかつて、統合失調症の看護師が全くいなかった病院で働いたことがない。精神科病院は職員が多いこともあるが、統合失調症という疾患は非常に頻度が高い疾患であることがわかる。
統合失調症の看護師の場合、主に3パターンがあるように思われる。
① 看護師国家試験に合格するまでは健康であったが、その後、働いているうちに顕在発症。
② 病気(統合失調症)になったことから医療職に興味を持ち、看護学校に入学、卒業しその後就労。
③ 統合失調症であるが、本人は気がついておらず、しかも治療を受けてもいない人。もちろん家族も知らない。(つまり生物学的に統合失調症であるが、無治療で過ごせる人)
一般には①が圧倒的に多い。しかもこの場合、看護師の免許取得についても、その時に発病していないので問題ない。統合失調症には症状の軽重にかなり幅があるので、重かった場合、仕事ができなくなるのは十分にありうる。特に持続的に幻覚妄想が残っている場合は仕事どころではない。発病後、仕事が続けられるかどうかは、どの程度寛解しているかが重要だが、結局は病型なんだと思う。幻覚妄想がほぼない状態でも、陰性症状が酷い場合はやはり働けないからだ。
このような看護師は非常に忙しいとかハードな職場はやはり向かない。そういう職場では再発するリスクもある。このように、いったん働き始めてから発病した場合、欠格事項が厳しかった時代でもそれで免許が返上になった人は非常に少なかったと思われる。
②の場合、かなりハードルは高い。統合失調症以外の疾患なら、まだできそうな感じがするのであるが、統合失調症の場合は、試験を合格していくこと、実習をすること、最後に国家試験を合格することの難易度から、個人的には相当に難しいと思っていた。しかし、このような人も現実にはいるのである。病型的に寛解時の欠陥症状が少ないことと、病前の能力が高いことが必要と思う。この場合たとえ統合失調症だったとしても、国家試験に合格した時点で病気は問題にならない。なぜかというと、その証拠が存在しないからである。
③のパターンは、かなり珍しいと思われるが、こういう人も実際には存在する。このような人が、将来にわたって精神科治療を受けないで済むかどうかははっきりしない。個人的にかなり難しいのではないかと思うが、このような統計自体が存在しないような気がする。(個人的にはいつかは破綻する確率の方が高いと思う)
僕は、このように無治療の人にどう対応するかについて、よく相談を受けていた時期があった。特に、リエゾンに行った病院の病棟の総婦長さんから(現在は総師長という)。痛感したのは、やはり精神医療を受けるかどうかは任意のものであるということ。行動がエキセントリックであれ、本人、家族が治療しないというものは治療できない。
僕の特に若い女性の入院患者さんで、特定の看護師を嫌うということあった。その患者さんの話を聞くと、その女性看護師は、配慮のない傷つくようなことをボコッと言うらしい。内容をよく聞いてみると、その看護師が決して悪意があったようには思えず、単に相手の気持ちを汲取って話しかけていないだけであった。こういう高い次元での機能が低下しているのである。
はっきり言って、統合失調症だからやむを得ないと言えた。しかし、彼女の場合、発病後に頑張って看護学校に入学し、国家試験に合格しているのである。精神病院で働くのはふさわしいとは言えないが、正直、他の科ではもっとできないと思う。精神科は彼女たちにとってまだ働きやすい職場なのである。それに、配慮のない言葉は、精神科的に健康とみなされる人でもあるし、そうとは思えない言葉でも結果的にそうなってしまうことはある。
この話には続きがあるが、書くかどうかはわかりません。
参考
精神疾患と社会とのかかわり
(ボツ原稿から)
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みんなのテーマ:精神病患者、集いの場
■ふむ。
私も、先日まで入院していましたが、一人だけ“アレ?”っていう感じのある看護師さんがおられました。
(一人だけじゃないかもしれない)
何というか、感情の波が少ない、または薄いとでもいう感じ。(親しくしてくださっていた患者さんも、私と同じような印象を持っているようでした)
ただ、これは単に性格的なものだったのかもしれないですけど。
私には、プレコックス感を感じる能力はないので。
あと、最後の一文には少し笑ってしまいましたw