少年調書流出、精神鑑定医を逮捕…秘密漏示容疑
奈良県田原本町の医師(48)方の放火殺人事件を巡り、中等少年院送致となった長男(17)の供述調書などを引用した単行本「僕はパパを殺すことに決めた」が出版された秘密漏示事件で、奈良地検は14日、著者でフリージャーナリストの草薙厚子さんに、供述調書の内容を不当に漏えいしたとして、長男を精神鑑定した精神科医、崎浜盛三容疑者(49)(京都市左京区)を秘密漏示容疑で逮捕した。同容疑での逮捕は極めて異例。崎浜容疑者は「その通りで間違いありません」と容疑を認めているという。
調べでは、崎浜容疑者は、昨年8月に奈良家裁から鑑定医に選任され、鑑定資料として長男の供述調書や父親の陳述調書などの写しを受け取り、10月5日ごろから15日ごろにかけ、自宅や京都市内のホテルで計3回、供述調書や、鑑定のため臨床心理士が作成した長男の心理検査結果、自らが書いた精神鑑定書などを草薙さんに見せ、職務上知り得た秘密を漏らした疑い。
地検は父親らから告訴を受け、9月14日に鑑定医や草薙さんの自宅、勤務先などを捜索、任意で事情聴取をしてきた。関係者によると、崎浜容疑者は地検の調べに、「草薙さんから何度も頼まれたので、鑑定資料を見せた。あんな形で出版されるなんて思わなかった」と供述、地検は草薙さんとのやりとりについて、さらに詳しく調べる必要があると判断した模様だ。
草薙さんは地検の聴取に「ある人物から捜査資料の開示を受けて、その一部をカメラで撮影した」と説明し、取材源は明らかにしていない、としている。
崎浜容疑者の逮捕について、本を出版した講談社学芸図書出版部は「『秘密漏示』を名目とする奈良地検の一連の捜査は到底容認できるものではありません。本社書籍に関連するとされる今回の逮捕に強く抗議します」としている。草薙さんは同社を通じ、「今回逮捕された鑑定医の方が私の情報源だったかどうか言うことはできませんが、私の著作にかかわる捜査で大変なご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます」とコメントした。
(2007年10月15日 読売新聞)