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ドル安でも米国製造業は浮上せず効果は薄く、雇用情勢はさらに悪化へ
Peter Coy (BusinessWeek誌、経済担当エディター) 最近、米国製造業では雇用情勢が改善していると誰もが思うことだろう。ドル安はボーイング(BA)やキャタピラー(CAT)、デュポン(DD)といった大手輸出企業の販売を押し上げているはず。最近のドル安基調によって、海外市場における米国製品の価格が下がる一方、輸入品の値段は上がるために、米国人が自国製品を買いに走るからだ。 しかし、事は教科書通りには運ばない。全米製造業者協会(NAM)の主席エコノミストであるデビッド・ヒューザー氏は、最近のドル下落にもかかわらず、製造業の雇用情勢は過去数年と比べ悪化すると予想する。現在、米国製造業の雇用者数は1400万人強。「おそらく今後1年間で、雇用者数は10万人以上減少するだろう」とヒューザー氏は言う。
ドル安でも雇用縮小の理由は?つまり、米国の貿易赤字が徐々に縮小しているにもかかわらず、製造業はいまだ圧迫されているということだ。米国製品が世界中で“永久セール”となっているのに、なぜ工場の雇用は消えてゆくのだろうか。その主な理由を以下に挙げてみよう。 ■生産拠点の世界的分散 米国の大手製造業者は、世界各地に生産拠点を分散させる傾向がある。顧客に近づくと同時に、1つの通貨にリスクを集中させないためだ。例えば、キャタピラーは主力製品の油圧掘削機をイリノイ州オーロラだけでなく、ブラジルと欧州、日本、中国でも生産している。同社の雇用者数は米国とそれ以外の国がざっと半々となっており、キャタピラーは為替が変動したからといって生産を移管したりしない。 一方、ボーイングは生産拠点の大半が米国にあるため、キャタピラーよりはドル安の恩恵を受けやすい。ボーイング広報のアン・エイゼル氏は、欧州のエアバスとの競争において「(ドル安は)多少当社に有利に働く」と言う。 ■国内需要の落ち込み ドル安で輸出採算は改善したものの、国内需要の落ち込みを補うには十分とは言えない。米国の住宅建築は絶不調で、材木からコンクリートブロック、家具に至るまで、あらゆる工業品の需要が落ち込んでいる。個人消費は全般的に弱含み、企業部門の投資も強くはない。対外貿易は重要とはいえ、国内消費に比べれば、小さな要因に過ぎないのだ。 ■対円、対元ではメリットなし ドルはユーロやカナダドルなどに対しては大幅に下落したが、日本と中国の両政府は円と元に対するドル安の進行を防いでいる。こうした状況下では、米国が日中両国に対する輸出を増やすことも、両国からの輸入品に対抗することも困難だ。
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