ある写真家の方がBlogの記事に私の撮る薔薇はポートレイトだと書いていた。

なるほど面白い視点だと思うと同時に、私は自分への追い込みを課せなければならない。ポートレイト、すなわち肖像というのはその人の生きて来た時間や過去や環境や家族構成や仕事や性格、もしかすると健康状態その時の精神状態まで見る側に伝わる写真と言う事なのだ、と私は理解している。　　　
仮に空間と時間を超えて「伝える」ことが写真としての目的ならば、出来れば健やかに伝えたいとは思うがしかし、それが一番難しい事だ。

アマチュアが撮る写真の一部で良く存在している、伝える側の振動の矢が余りにも大きく重い写真というのは見ていて疲れるから余り好きではないし私も撮りたいとは思わない。それらの多くは愛とか夢とか頑張ろうとか切ないとか、詰まるところ「そうあるべき」「そうありたい」から抜けきれない、不自由な表現ばかりではなかろうか。世間はそんな簡単に癒されたり励まされたりするのは悔しいと思わないのかな。









ある時、仕事の合間に窓の外を撮っていたら、その場に居合わせた人が「空？　空とか好きなの？」と真剣な表情で私を覗き込む。
「そうじゃないです」と苦笑しながら返してカメラをバッグに収めながら、その「そうじゃない」の後の言葉が続かなかった。

現代のデジタル文化の中で写真とは何か。
という問いに対する答を私達は共通認識として持ち得ないのかも知れない。それどころか氾濫する写真ムーブメントの中に写真と言う認識すらもなされない。記録写真と作品としての写真は余りにも差異があり、あり過ぎる中に埋まって行く作品もまた誰も押さえる事が出来ない威力と言葉を持って進化し続けてゆく。

早口でお喋りな意味の無い軽いアートが日常に入り込んだ時から、私達の本質的な「人を豊かにするもの」から遠ざかってゆき、様々な意味で経済活動そのものが目的と化したように思える。



写真、って何だろう。















私はあらゆる目的から解放された言葉だと思う。
あらゆる目的から解放された時、その言葉は内容を超えて本来の輝きを放つ。

言葉にとって重要なのは書かれている内容ではない。（決して論文ではない、ところが論文を同じ方法論で理解させようとするのが悲しいかなこの国の教育だ。　これは語彙という芸術に対する取り返しのつかない侮辱行為である）
真実の言葉にとって重要なのは、フィクションかノンフィクションかと言う事でもない。
無論、本音である必要性もゼロだ。（あくまで趣味で写真を撮っているのだから……ところが言葉＝行分けされた日記的な本音の集まり、あるいはそれらを美しい言葉で飾ったもの、あるいは飾らないことを美学と勘違いしたもの、という先入観は悲しいかな依然この国に根強く、だからこそ何に対してでも可愛いと簡単に言われる）
撮る側のの意図を伝えるものではないし、ましてやマスメディアを喜ばせるためでもない。








話を元に戻そう。
目的から解放されて写真であることを写真自身が喜んでいるような写真。
写真自身が喜んでいる無音の言葉。

本当に喜んでいる＝生きている言葉は、人を生かす力を持つと思う。


ポートレイトのような薔薇の写真を撮れるようになるには多分１０年はかかると思う。
それでも私は撮り続けるだろう。育てた薔薇が喜ぶのなら私はいつになっても構わない。


そういう事で私は受けるべき楽しい罰ゲームとして薔薇強化週間になったのだが、いかんせん自然の摂理との語らいなので毎日どの薔薇が咲いてくれるのかは未知であり、咲かない日には撮る事はないと思うのでここに追加しておきたい。


いつもの記事に加え楽しい罰ゲームを薔薇で挑むポートレイトはかなり脈略無く続く。

地球の裏側に暮らす写真家の一言で動き出す単純な自分もまた垣間見えるかも知れない。
それを人はエネルギーと呼ぶのだ。