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自由に描かせて 「上手」「下手」より、認めてあげよう

紙を張り合わせたり絵の具を使って思い思いの絵を描く子どもたち=東京都北区の「赤羽おえかきクラブ」で
紙を張り合わせたり絵の具を使って思い思いの絵を描く子どもたち=東京都北区の「赤羽おえかきクラブ」で

 子どもの絵は楽しい。ゴマが付いた風船かと思うと「お母さんの顔」、上から見た弁当箱みたいなのは「ドッジボールをしているところ」。子どもの目線で見た世界が紙の上に広がる。だが、親はつい「もっと上手に」と言ったり、指導してしまいがちだ。「お絵かき」に大人はどうかかわればいいのか、芸術の秋に子どもの絵の世界をのぞいてみた。【望月麻紀】

 *心の表れ

 東京都北区赤羽の絵画造形教室赤羽おえかきクラブ。4歳から成人まで計約60人が通う。教室を訪ねると、幼稚園から小学低学年の10人が絵筆を走らせていた。

 この日のテーマは自由。1時間半で画用紙いっぱいに「森の中の動物たちの運動会」を描いた小1の男児が絵を説明してくれた。赤い玉を追う3匹のヘビは「玉転がしをしてるの」、切り株に座ったクマは「応援しているんだ」。クマの頭上を走る赤い線は「南風。暖かいから赤なの」と物語は尽きない。

 「自由に描いた子どもの絵には、子どもの気持ちが表れる」と教室の主宰者で指導者の杉浦さやかさん(35)。男児は学校の運動会が終わったばかり。飼っていたカブトムシも森の木々に描きこまれ、心の風景が伝わってくる。

 上手さを追求するあまり手本を自分で描いたり、市販の絵のワークブックを使って指導する親もいるが、杉浦さんは「『これが正しい形』と思いこみ、教えられたようにしか描けなくなる」と危惧(きぐ)する。「焦らず自由に描かせてあげて」と呼びかける。

 *一緒に楽しむ

 では、「ゾウさん描いて」などと子どもにせがまれたらどうすればいいのだろう。「それは『一緒にやりたい』という気持ちの表れ。親が描いてしまわずに、動物園の思い出を振り返って『鼻が長かったね』などと会話を楽しんでほしい。親が簡単な丸などの形を描き、続きを子どもが描くように誘うなどきっかけを作るのもいい」と話す。

 元保育士で保育・子育てアドバイザーの原坂一郎さん(51)も、写実性を重視しすぎたり、紙の片隅に少しだけ描くと「まだ描くスペースがある」と言ってしまう大人が多いと指摘。「上手、下手の評価はせず、まず『できたね』と認めてほしい。子育て全般に通じる基本だと思う」

 *両手で受け取る

 おもちゃデザイナーの寺内定夫さん(74)は「認める」第一歩に「絵を見せに来たら、両手で受け取って」と助言する。

 寺内さんは半世紀にわたり子ども約5000人の絵約7万枚と、描いた時の親子の会話を研究してきた。3歳女児が描いたゾウは耳はなく、鼻も短いが小さな目はあった。「動物園で見たゾウさんは目が可愛かった」というのが理由。かけっこで1位だった4歳男児は、画用紙に1本線を引いた「運動会の絵」を描いた。自分が切ったゴールのテープだ。

 「子どもの発見に親が共感することが絵を描く意欲につながる」と寺内さん。定型のお姫様ばかり描く就学年齢前後の女児の絵にも親が関心を寄せ続ければ「定型から抜け出られる」と話す。

 ◇点や線、「人」出現…段階経て発達

 子どもの絵には発達過程があり、国内外の専門家がその段階を分析している。1~6歳ぐらいまでの流れは次の通りだ。

(1)点や線のなぐりがき。力強さが次第に増し、うずまきが現れる

(2)丸が人やパンなど意味を持つようになる

(3)丸から単純な手足の線が伸び「頭足人間」と呼ばれる「人」が現れる

(4)衣類を着た「人」などイメージした形を描く。ただ、手前や奥のない羅列だったり、自分を大きく描いたりする

 個人差もあり、あくまで目安。寺内さんは「形よりも家族や友達、笑顔、生活体験を描いているかを重視して」と話す

毎日新聞 2007年10月14日 東京朝刊

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