◇地裁判決
十分な検査を行わず良性腫瘍(しゅよう)を誤って乳がんと診断され乳房を切除されたとして、県立中央病院(盛岡市)で治療を受けた遠野市の女性(46)が、同病院を管理する県を相手取り約820万円の賠償を求めた訴訟で、盛岡地裁は12日、約400万円の支払いを命じた。榎戸道也裁判長は担当医のミスを認め、「乳房の一部を失い縫合跡が残ったことに女性は強い精神的打撃を受けている」と指摘した。
判決によると、女性は01年9月、乳房にしこりを覚え同病院外科を受診、担当医は乳がんと診断して左乳房の一部を切除した。左右に10センチの傷跡が残り、手術後、摘出した腫瘍を病理組織診検査したところ、悪性所見は認められなかった。
女性側は、細胞学的検査も医師の熟練度で判定に大きな影響がある。担当医は自身で患部の生検を行うべき注意義務と患者への説明義務があったのに怠ったと主張。
一方の県側は、マンモグラフィーや超音波など複数の検査を行い、他の病院で行った細胞診でもクラス5の「悪性である可能性が高い」と診断されていたと反論していた。
判決では「細胞診は結果だけでなく、判断根拠も重要視されており、その根拠を確認した上で生検する注意義務があった」と原告側の主張を認めた。
原告代理人の坂野智憲弁護士は「細胞診でクラス5と診断されていてもより慎重な判断を求めており、現状の乳がん治療の流れに沿った判決だ」と評価した。県医療局は「主張が認められず残念。判決文を検討し今後の対応を決める」としている。【山口圭一】
毎日新聞 2007年10月13日