メディアが変わると思考のテンポが変わる。こう実感するのは、今年六月まで関連のケーブルテレビ・oniビジョンで報道制作に携わっていたからだろう。ニュースを届ける立場からすると、テレビの世界はテープを早回ししているかのように秒単位で進み、瞬時の判断が求められる。
古巣の新聞は締め切りがあるとはいえ、テープを巻き戻して再度見るように「本当に正しいの」「前にも同じようなことがなかったか」と考える機会が多い。もちろんテレビでも検証や解説を盛り込んだ番組があり、双方に特性はある。
ただし、圧倒的に新聞の持つネットワークやマンパワーは上回っている。少人数で多くの番組を作るケーブルテレビにいた経験で、この点は痛感した。新聞製作の心臓部・編集局から放送するoniビジョンの番組「山陽新聞ニュース岡山」は、今月から新聞の部長、デスクらによる解説コーナーが設けられ、厚みを増した。新聞の力は異なるメディアでも、演出方法を工夫することで発揮される実例だろう。
新聞とテレビのすき間を埋めるかのように、新聞業界でインターネット分野が取り組まれている。山陽新聞社など地方紙中心の五十二社と共同通信社による全国新聞ネットが、昨年十二月から運営するニュースサイト「47NEWS」(よんななニュース)は、全国の地域に密着したニュースを得ることができる。
こうした多様なメディアを見渡すと、求められるのは質の高いニュースであり、それを提供する新聞の力だと思う。
(特別編集委員・江草明彦)