今年のノーベル平和賞に映画や講演などを通じ地球温暖化の危機を訴えるアル・ゴア前米副大統領と、温暖化の原因や対応策などを研究する国際組織「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC、事務局ジュネーブ)が選ばれた。
授賞理由についてノーベル賞委員会は「人間の活動に起因する気候変動についての知識を広め、必要な対応策への基礎を築くよう努めた」と説明した。その上で異例の呼び掛けを行った。大規模な気候変動は資源の争奪戦を起こして紛争や戦争の危険性を増大させると警告し、温暖化対策への行動が必要と訴えたのだ。強い危機感の表れといえ、重く受け止めたい。
最近の平和賞は、争いのもとになる環境悪化や貧困問題への取り組みを評価するようになった。今回もこの流れに沿ったものだ。
ゴア氏はクリントン政権の副大統領として、国境を超えて温暖化に対処する京都議定書の取りまとめに尽力した。気候変動の危険性を訴える映画「不都合な真実」への出演や講演でも温暖化防止を唱えてきた。平和賞受賞は温暖化対策に消極的なブッシュ米大統領に方針転換を促す強い圧力になるのではないか。
IPCCは今年前半にまとめた報告書で、急速に進む温暖化の実情や影響の深刻さなどを示し、科学的見地から世界に警鐘を鳴らした。
温暖化対策は待ったなしの状況だ。しかし、世界的に京都議定書への対応は鈍く、議定書に定めのない二〇一三年以降の展望も開けていない。今回の平和賞は、国際社会が温暖化への意識を高める機会になろう。危機に正面から向き合い、温室効果ガスの削減に向けた大きなうねりが起きることを期待したい。