2007年10月10日(水)深夜2:29〜3:29
  • 指 揮
    大友直人
  • ピアノ
    アリス=紗良・オット
  • ヴァイオリン
    岡崎慶輔
  • チェロ
    趙 静
  •   
  • 管弦楽
    読売日本交響楽団
  • 司 会
    古市幸子 (日本テレビアナウンサー)
チャイコフスキー作曲
ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23  第1楽章 から
メンデルスゾーン作曲
ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64  第1楽章
ドボルザーク作曲
チェロ協奏曲 ロ短調 作品104  第1楽章 から
※2007年8月17日 東京オペラシティ コンサートホールにて収録

放送内容
今月は8月に行われた「三大協奏曲」コンサートの模様をダイジェストでご紹介しました。 誰もが知る超・超・超有名曲ばかりの楽しいプログラム「チャイコン」「メンコン」「ドボコン」。 一夜にして3つもの全く違った大曲を鮮やかに表現し分けたのは、指揮者・大友直人さん。 そしてゲストに現在、国内外で大活躍中の<今、注目の若手実力派ソリストたち>が結集しました!
今回は、放送でご紹介しきれなかった「ソリスト・スペシャルインタビュー」の模様をご紹介します!

アリス=紗良・オット

チャイコフスキー作曲 「ピアノ協奏曲 第1番」について
<協奏曲を演奏する「楽しさ」を、お客様にも伝えたい!>
私は、オーケストラと弾くのがすっごく楽しいんです。オーケストラと弾くと、右側のお客様とだけではなく、オーケストラとも会話できて・・・つまり自分全体が音楽の会話に囲まれてる・・・っていう、舞台での気持ちがすごく大好きなんですよ。自分の感情とか、音楽を通して聴衆の皆様と会話するのはすごく大事だと思うんですね。お互いにらめっこしたり、笑いあったり・・・時には辛い涙を流してきた中で、この曲はいつの間にか2年間弾いているんです。 その長い間いろいろな経験が詰まっているこの曲に対しての思いと感情を、そして舞台の上での「楽しさ」を、少しでも聴衆の皆様にお伝えすることができたら・・・と思っています。
<印象に残っている出来事・・・>
2年前の17歳のとき、キエフの国立フィルハーモニーと共演したんですが、その本番の次の日に日本大使館の方がキエフから250Km離れている「カーメンカ」という町に連れてってくださったんです。そこはチャイコフスキーの妹の別荘があって、そこで彼の愛用のピアノを弾かせていただきました。第3楽章を弾いていたちょうどその時、ミュージアムの館長さんが「その曲の元はウクライナ民謡だ」という事を教えてくださいました。私はその時初めてそのことを知ったんです。その後11月に同じオーケストラで日本ツアーに来ていた時、その館長さんが、わざわざ外務省を通して日本まで「歌詞つきの楽譜」を送ってくださったんです!しかもご自分で譜面に起こして。それ以来、私はこの3楽章のメロディに歌詞をつけて歌っているんですけど・・・そういう大事な経験が元で、曲に対しての考え方や曲を見る目が変わってきました。この経験は、本当にすごく大切な思い出の1つですね。

岡崎慶輔

メンデルスゾーン作曲 「ヴァイオリン協奏曲」について
<この曲の1番の魅力>
1番の魅力は「癒される曲」というところでしょうか。この曲はヴァイオリンの華やかな部分を充分に魅せれるような作曲をしていますので、やはり高音部の魅力、というのがあると思うんですよね。ヴァイオリンのA線、E線をよく使いますので。2楽章などはとっても叙情的で清楚な感じのメロディで、僕も、弾いていてとても癒されるような曲だと感じています。3楽章は、踊りのような華麗な優雅な感じの曲。 メンデルスゾーンは裕福な家庭に生まれたので、そういうエレガントさも持っています。僕は、この曲に対して「エレガントなイメージ」も持っていますので、そういうもので音楽を通して皆様の「心の癒し」になれば・・・と思っています。人それぞれ感じ方が違いますので、こうとは言えないんですけど・・・そういう方向性で、コンサートに望みたいと思っています。
<曲冒頭から有名なあのソロのメロディ・・・集中力を高めるための秘策>
僕の場合はステージ服を着た瞬間から気持ちが変わりますね。シャンとした気持ちになります。 そして、楽屋で待機している間、コンサートの始まる15分ぐらい前に、エネルギー補給としてチョコレートを一粒、食べたりとか・・・そういうのでエネルギーを蓄えて、集中度をだんだん高めているんです。ステージに出て行く時からじゃなくて、楽屋にいるときから、1人で集中度を少しずつ高めていくようにしてます! (ちなみに、岡崎さんはビターチョコレートがお気に入りなんだそう!コンサート前に一粒のチョコレートは欠かせないアイテム、なんですね!)

趙 静

ドボルザーク作曲 「チェロ協奏曲」について
<デビューから今まで、この曲との向き合い方が変化してきた!>
とっても難しかったのが、他のチェロコンチェルトと違って「チェロが勝手に弾く曲ではない」ので、どうやってオーケストラに上手く乗るか・・・ちょっと時間がかかりましたね。 最初の頃は、自分が弾くことだけで一生懸命でした。 すごくオーケストレーションが厚い曲なので、チェロが1人ぼっちになったらこの曲は大失敗だと思うんです。こういうことは、何回も何回も弾いて、何回も何回も聴いて・・・どんどん勉強になったんだと思います。

<この曲の魅力・・・>
たくさん魅力的なことがあるんですけれども、1番魅力的なのは、オーケストレーションがものすごく華やかなところですね。指揮者の人から見ると本当にシンフォニーみたいな曲なので・・・。この曲は、それこそ世界で1番美しいものとか悲しいものとか、1つの愛情物語が表現されています。ドボルザークは、自分の奥さんのお姉さんに恋をしたんですね・・・。本当は彼は、3楽章の1番最後のゆっくりした部分を、元々は書いてなかったんですね。その後、「お姉さんが亡くなった」という情報が入ったときに、とってもショックを受けて、また最後の1ページを書き始めて、独特な<チェロ・コンチェルト>として、最後にゆっくり終わる、という風になったんです。だから最後の1ページは、本当に彼の全ての思い出が入っている・・・と思いますね。
<故・ロストロポービッチさんに教えを受けた事で、印象に残っていること>
やっぱり、イマジネーションですね。 例えばすごく短い曲を弾いても、その世界で全てのものを表現できる、っていう表現力がものすごく印象に残っています。彼にとってはもう、チェロ1本で世界を表現してる、というのがすごく印象的です。

演奏者の略歴
アリス=紗良・オット
Alice Sara Ott(piano)
1988年ミュンヘン生まれ。4歳から本格的にピアノを学び、5歳で最初のコンクールに入賞。97年スタンウェイ国際コンクール、04年ピエネロ・デルヴァルティドーネ国際コンクールで第1位など受賞歴は多い。
ヘラクレス・ザール(ミュンヘン)、コンセルトヘボウ(アムステルダム)等の一流ホールに出演するほか、ヨーロッパの主要音楽祭にも出演、高い評価を得ている。
オーケストラとの共演も多い。06年夏にはジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団に客演して大成功を収めた。日本ではこれまでに浜離宮朝日ホールなどに出演するほか、井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢などと共演。ブレンデル、中村紘子、フォークト等多くのピアニストからも絶賛され、新進気鋭のピアニストとして注目を集めている。

岡崎 慶輔
Keisuke Okazaki(violin)
05年難関のミュンヘン・コンクール第1位。リピツァー・コンクール及びヴィエニアフスキ・コンクール(シニア部門)第1位他、数々の国際コンクールで優れた成績を収める。4歳より母の手ほどきでヴァイオリンを始め、13歳でメニューインに才能を認められる。浦川宜也、ザハール・ブロン、イゴール・オジム各氏に師事。ベルン音大ソリスト・ディプロム課程を首席で卒業し、「Eduard-Tschumi-Preis」を受賞。更にベルリンフィル・カラヤン・アカデミーでサイモン・ラトル、安永徹、ガイ・ブラウンシュタイン各氏の下で研鑽を積む。
バイエルン放送響、サンクトペテルブルグ・フィル、フィルハーモニカ・フンガリカ他、国内主要なオーケストラとの共演を始め、BCMGとの現代曲の世界初演、国内外での音楽祭・リサイタル・室内楽等多数出演し、透明感のある美しい響き、繊細で多彩な表現力は、いずれも高い評価を得ている。20歳でCD「デビュー!」をリリース。

趙 静
Jing ZHAO(cello)
北京生まれ。東京音大附属高校に留学生特別奨学生として来日。第2回ビバホール チェロ・コンクール第1位を受賞し、98年 小澤征爾と共演。99年 アバドに絶賛され、00年には、ムーティ指揮スカラ・フィルと共演、 チョン・ミョンフンによる室内楽企画に出演。ビクターエンタテインメントより初のCDをリリース。02年、ジャン・フルネ指揮都響と北京でのデビュー。03年、チョン・ミョンフン指揮東京フィルと共演。04年、サロン・ド・プロヴァンス室内楽音楽祭に参加。05年9月、難関で知られるミュンヘンARD国際コンクール チェロ部門で1位受賞。併せて新作の優れた解釈に与えられる賞及び聴衆賞も受賞。現在使用している楽器は、シンガポールの林哲明 (Mr. Lin Kim Min) から貸与されている 1690年製 Giovanni Grancino。

大友直人
Ohtomo Naoto(conductor)
東京交響楽団常任指揮者、京都市交響楽団常任指揮者兼アーティスティック・アドヴァイザー、東京文化会館音楽監督を兼任。僅か22歳でNHK交響楽団を指揮してデビュー以来、1986年大阪フィルハーモニー交響楽団とのヨーロッパツアー、1992年東京交響楽団との東南アジアツアーなど世界各地で絶賛を博す。1988年日生劇場における「魔弾の射手」でのオペラデビュー以来、「リゴレット」「魔笛」などを指揮し高く評価されている。教育的活動にも力を注ぎ、「こども定期演奏会(東京交響楽団)」や「こどものためのコンサート(京都市交響楽団)」を行うほか、教育的音楽セミナー「ミュージック・マスターズ・コースinかずさ」を毎年開催するなど、活発な活動を行っている。