和歌山市の男性司法書士(73)が昨年9月、裁判所への書類提出などの際にだけ使用できる「職務上請求書」で他人の戸籍謄本や住民票の写しを不正取得し、和歌山地方法務局から業務停止1年間の懲戒処分を受けていたことが分かった。業務でないのに取得したことが処分理由で、司法書士は「知人に頼まれてやった。悪用する意図はなく、反省している」と話している。
関係者によると、司法書士は06年9月4日、知人の同市内の50代女性から「弁護士に訴訟を頼んだら、戸籍謄本などの取得は地元の司法書士に依頼するよう言われた」と相談された。このため、司法書士は、同日から同月14日までに、訴訟の相手方となる同市内の男性(61)の戸籍謄本や住民票の写し、親族の戸籍謄本など計14通を職務上請求書で申請し、交付された。
女性は「和解のため親族の住所を確認したい」などと要求していたが、結局は和解にも訴訟にもならなかったという。
司法書士は「他人の依頼を受けて裁判所に提出する書類を作成する」など、司法書士法第3条に定められた業務を行う時にのみ職務上請求書を使用できる。同法務局は「同法に定める業務に当たらないにも関わらず、住所確認のために他人の戸籍謄本などを取得した」と判断し、8月3日付で処分した。
司法書士によると、女性には取得した戸籍謄本などを「弁護士に渡すように」と言って渡したが、女性はそれをコピーして男性の家族の勤務先などに送りつけた。女性は男性に1500万円を貸していたという。
司法書士は毎日新聞の取材に「弁護士からの依頼と言われ信じてしまった。(弁護士に)確認しなかったのはうかつだった」と話している。【加藤隆寛】
毎日新聞 2007年10月13日 15時00分