やっぴらんどミステリィなAOMORI

霊場恐山

Map004.jpg (3246 バイト)「青森県とミステリイ」ときたら、ここは絶対はずせないかもしれない天下の霊場、恐山です。しかし逆に、御多分に漏れず、恐山も「観光」という大義名分のもと、もはやミステリイな世界からかけ離れてしまっているのかもしれません。それでも、恐山の醸し出す、あの雰囲気はやっぱりミステリイの名にふさわしいと思うのです。

恐山01 (17378 バイト)恐山。その名称がもはや謎めいています。その由来については、さまざまな説があるようです。ひとつは、このあたりの山中で修業をしていた慈覚大師が、飛んできた一羽の鵜(う)によって導かれ、湖を発見した。大師は湖を「宇曽利湖(うそりこ)」と名付け、それで「ウソレヤマ」と呼ぶようになり、のちに転じて「恐山」となったという説。

またもう一つの説としては、青森県によくあるアイヌ語由来説。アイヌ語の「ウッショロ(湾)」とか「ウサツオロヌブリ(灰の多く降る山)」から来ているというものです。

恐山は、下北半島の中心都市むつ市から約15qのところにあります。むつ市までは、青森市から車で約2時間。列車だと、大湊線「快速しもきた」で約1時間半。いずれにしても、左側にむつ湾のおだやかな海の景色が延々と続きます。

恐山02(18217 バイト)

恐山に入ると、まずツンとした硫黄の臭いが鼻につきます。恐山一帯は休火山で、いたるところから亜硫酸ガスが噴き出し、白い岩肌は焼けただれてところどころ真っ黒に変色しています。賽銭として置かれた硬貨も真っ黒です。看板には、「発火する恐れがあるので、火を使わないでください」という注意書きまであります。そういった風景があたかも「地獄」を連想させるのでしょう。「○○地獄」という名前の看板があちこちに見られます。

しかし、本来恐山は、「極楽」でもあったのです。

恐山03 (19367 バイト)
恐山を開いたのは慈覚大師円仁というお坊さんだといわれています。今から約1200年前、大師が唐で修業していたところ、夢の中でお告げを受けました。「国に帰り、東方行程30余日の所に行けば霊峰がある。そこに地蔵尊一体を刻み、その地に仏道を広めよ」というものでした。ただちに帰国して諸国を行脚したところ、ついに夢のお告げと符合する地を見つけた。それが恐山なのだそうです。

彼が刻んだ「地蔵菩薩」の「地」という文字は、「大地」を表し、「蔵」は生命を産み育む「母胎」を表します。人間のさまざまな痛みをわが痛みとして受け止めてくれるのが「地蔵」なのです。地蔵菩薩が見守っていてくれる限り、「地獄の谷」も絶対安楽の極楽です。『地蔵とともにおわす故に浄土なり』。この言葉は、恐山の本質を表しているといえるでしょう。

「人が死ねばお山(恐山)さ行ぐ」。下北地方では、よくこういわれますが、恐山が死者の霊が集まるお山になったのはいったいいつ頃からなのでしょうか。



恐山04 (19394 バイト)

その昔は、日本海を舞台とした北前船が、航海の安全や家業繁栄を祈るために参拝に詣でたものだといいます。また、下北地方には、大漁や五穀豊穣、家内安全、無病息災といった現世利益を願う「地蔵講」という習わしがありました。村では、季節が変わるごとに恐山に詣で、地蔵菩薩に御利益を願ったものだそうです。ところが、この「地蔵講」が戦後消え去り、それと並行してマスコミが「秘境」とか「死霊の山」などといったイメージをあおるようになって、恐山はいつしか死者の魂が集まる山とされたのです。

恐山といえば、「イタコ」が有名です。亡くなった人の魂を降ろしてくれるのがイタコですが、毎年7月20日〜24日に行われる恐山大祭には、たくさんのイタコが店を開きます。このイタコがたくさん集まるようになったのもそんなに古いことではなく、昭和30年代からだそうです。

恐山05 (17974 バイト)現在もイタコは県内各地に健在ですが、その数は年々減り、現在は16人しかいません。また、彼女たちの平均年齢も60歳近くとなり、後継者はほとんどいません。ところがそんな中で、26歳のイタコが一人いるのです。松田広子さんといって、中学卒業と同時にイタコの世界に飛び込み、高校に通いながら経文を覚え、肉や卵を断った修行生活を続け、19歳でイタコとして独立したといいます。現在、ただひとりの健常者でもちろん最年少。最後のイタコといわれています。松田さんは、ふだんは八戸市の自宅で口寄せ、おはらい、祈祷、人生相談などを行って生計を立てているそうです。

 

恐山にも、大祭のとき以外でも口寄せをしてくれる場所があります。左の写真の奥の方に貼り紙が見えますが、それには「口寄せ3000円」と書いてあります。

※松田広子さんについてお問い合わせをいただいても、連絡先等については当方わかりかねますのでご了承ください。