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救急患者に最善の医療を 確実な受け入れ態勢の整備へ

公明新聞:2007年10月14日

渡辺党救急医療対策推進本部長

産婦人科、小児科医の確保に全力
党対策推進本部の渡辺孝男本部長に聞く

渡辺党救急医療対策推進本部長

 公明党は、国民の生命にかかわる救急医療体制の強化を最重要課題と位置づけ、福田政権発足時の自民党との連立政権合意に盛り込みました。救急患者を確実に受け入れ、最善の医療を提供できる体制の整備に向け、必要な対策と公明党の取り組みについて党「救急医療対策推進本部」の渡辺孝男本部長(参院議員)に聞きました。


――政権合意に救急医療体制の強化が盛り込まれました。

 渡辺孝男本部長 緊急に取り組むべき最重要課題の一つとして、医師不足対策に加え、ドクターヘリの配備促進や救急患者の受け入れを確実に行うためのシステムづくりなどが合意されました。


8月29日、奈良県の妊婦が搬送先が決まらずに死産してしまうという誠に残念な事件が起きました。一人の命を大切にする公明党として、救急医療体制の不備を改善し、国民が安心できる体制を先頭に立って確立します。

 ――現状はどんな問題点があるのでしょうか。

 渡辺 例えば、入院を要する子どもに適切な小児救急医療を提供できる地域(小児救急医療圏)は、全国で62%(396圏のうち245圏)にすぎません。体制が未整備な地域のうち、約8割は小児科医の不足などを原因として挙げており、やはり医師不足が大きな問題です。

急ぐべき改善策
広域連携の緊急情報システムを確立 
専門医が迅速・適切な搬送を助言、指導 
ドクターヘリの全国配備をいち早く

――この問題にどう取り組みますか。

 渡辺 医師が不足しているのは、小児科医、産婦人科医、救急医などです。産科を例にとれば、過酷な勤務状況や、難しい治療(体重2500グラム未満の低出生体重児や高齢の出産など)が増え、一歩誤れば訴訟を起こされる可能性があることなどで、医師をめざす若い人が敬遠しがちです。

 医師不足に対しては、今年5月に政府・与党で合意した国の「緊急臨時的医師派遣システム」の活用に加え、小児科や産科などの診療報酬引き上げや勤務医の過酷な長時間労働の改善など、抜本策を講じなくてはなりません。

 また、地域医療を担う医師の確保に向け、医師の養成のあり方を見直すことも必要です。例えば、地方の国公立大学では、それぞれの地域の医療を担う医師の養成を最優先し、卒業後の生涯教育システムを確立するなど、医学部の入試方法や奨学金、教育のあり方を含めた総合的な対策が必要です。

こうした点について公明党は、今国会の衆参両院の代表質問で強く訴えました。


――救急医療のシステムの改善点は。

 渡辺 救命を担う現場は一刻の猶予も許されないだけに、現状の限られた人材、施設を生かし、救急医療の隙間を埋める確かな対策を早急に講じなくてはなりません。東京消防庁の災害救急情報センター

 第一のポイントは、県内はもちろん、隣県まで含めた広域をカバーする救急医療情報システムを確立することです。空きベッドや専門医の有無の状況が広域レベルで瞬時に分かるセンター機能を構築しなければなりません。

 そして、このシステムが実際に救急患者の救命に有効に働くよう、患者の状態に応じて適切・迅速に搬送先を助言・指導できるメディカルコントロール体制の整備が求められます。具体的には、消防の救急指令室に的確な判断が下せる専門医を配置するなどして、救急隊に搬送先をアドバイスできることが大切です。

 医療機関が救急患者の受け入れを断る理由は、ベッドの満床や医師の不在、手術中などのほか、患者の症状に的確に対応できる専門医がいないこともあります。周産期(妊娠満22週から生後満7日未満まで)の母子や脳卒中、急性心筋梗塞の高齢者、多重外傷の患者、子どものやけどなどは、専門性の高い医療機関に迅速に運ばなくてはなりません。現在、このメディカルコントロール体制が確立されているのは東京都や横浜市など、ごく限られた地域です。


もう一つは、搬送体制の強化です。めざす医療機関にいかに早く患者を搬送できるかで、救命率は大きく異なってきます。その意味で、広域であっても専門医のいる医療機関に迅速に搬送できる、場合によっては治療しながら搬送できるドクターヘリは、今後の救急医療の確立に欠かせない存在です。ドイツでは州法で、ドクターヘリを活用し、住民に対して15分以内に治療を開始できるようにしなければならないという「15分ルール」をつくっていますが、日本も少しでもそれに近づけるべきです。

 公明党の推進で、ドクターヘリ法が成立し、都道府県は医療計画の策定に際して、ドクターヘリを用いた救急医療体制を定める場合に、その目標などを定めることになりました。


――高齢化で増えている脳卒中や急性心筋梗塞にもドクターヘリは有効ですね。

 渡辺 例えば、脳卒中の一種である脳梗塞では、発症後3時間以内に超急性期血栓溶解療法など適切な治療を行えば、救命率が大きく向上します。

 ――ベッドが満床で受け入れられない問題に対しては。

 渡辺 ベッドが満床になってしまうと、新たな救急患者を受け入れられなくなります。対策としては、救急治療室がスムーズに回転できるよう、後方支援の病床を確保しなければなりません。

 特に周産期医療においては、低出生体重児に対応できるNICU(新生児集中治療管理室)が不足しており、その整備とともに、当面は広域の医療機関の連携をしっかりと構築しなくてはなりません。


――救急医療対策推進本部として、精力的に活動を展開していますね。

 渡辺 現状について関係省庁からヒアリングを行うとともに、活発に現場を視察し、関係者の声に真剣に耳を傾けています。問題点を徹底的に洗い出し、今月中には提言をとりまとめ、必要があれば救急医療体制を確立するための法整備の準備に入ります。

 都道府県は今年度、来年度から5年間にわたる医療計画を策定することになっており、公明党の提言を都道府県の医療計画にも反映させていきたいと考えています。

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