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第8回 説得力を磨くための7つの心がけ (安達洋-育てる力)「育てる力」第8回目のテーマは、「説得力」です。 「説得力」は人を育てる時に欠かせないスキルのひとつであり、そのような立場 にいる人間であれば、どうにかして手に入れたいと願うはずです。私自身、「説得力」を身につけるために日々自己研鑽の日々を送っていますが、 これまでの体験の中から「説得力」習得に関連して感じることを7つにまとめてみました。 1.正直であること 人を育てるとき、駆け引きは基本的にないと思っています。不器用と言われようとも「真正面から向き合うことでしか人は育たないのではないか?」というのが、会社経営5年目の私なりの結論です。ダメだなと思った人にどんなうわべの褒め言葉を向けても、何も進展はありません。「日本人は褒めるのが下手」とは良く言われますが、まだ成果も出していない人に褒め言葉をばら撒くよりも、相手が出してくれた成果を一緒に祝うのが、私にとって理想の人間関係です。ある営業の方の言葉が印象に残っています。「仕事を受注するためにクライアントと酒を飲むのではない。お互いが関わるプロジェクトが成功したとき、その成功を祝って酒を飲むのだ」と。 2.共に学ぶ姿勢 人を育てる立場にいる人は、人を育てる作業を通じて、いろいろと学んでいます。一見教えているように見えても、実際には、教えるという作業を通じてたくさんのことを学んでいます。逆に、教える立場、育てる立場に100%入り込んでしまうと、そこから先の成長も止まってしまうように思います。部下の誰よりも、スタッフの誰よりも、生徒の誰よりも、自分こそが一番の学び手であることを目指したいものです。 3.例示 言っていることは正しいけれど心に響かないことがあります。おそらくそこに体験や現実の匂いがしないからなのかもしれません。何よりも、自分自身が貪欲に体験すること。そしてその体験を独りよがりなものに終わらせないために、さまざまな他者事例を絡ませて伝えてみると、一層相手に伝わりやすくなるように思います。 4.ギブアンドギブ 相手を説得しようと思ったら、こちら側から与えられるものは惜しみなく与えるべきだと思います。この「惜しみなく」というところがミソであり、見返りを期待する気持は極力排除したいものです。与えること自体が喜びに感じられるようになったらしめたもの。「なんとかして相手を説得しなければ」と策略に走るよりも、とにかくギブで攻め抜いてみましょう。「この仕事うまく行くかな?」「このクラスうまくいくのかな?」「来年も受注できるかな?」と不安になったとき、あるいはならないために、私は常にギブアンドギブ作戦を頭の中に描いています。「損して得取れ」という発想も悪くないのですが、ギブアンドギブ作戦では、与えることは「損」とは考えられていないのです。 5.オーラの戦い 教室はオーラのぶつかりあいの場です。ポジティブオーラが溢れているクラスにいると、講師である私も元気をもらいます。もちろん、いつもそういうクラスばかりではありません。そういうときは、生徒さんが放つネガティブなオーラを包みこむくらいのポジティブオーラを自分が出し続けるしかありません。この戦いに負けると、あっという間にネガティブオーラ、沈滞ムードがクラスを支配します。そうならないように、いつも気を張り詰め、かつ、明るい気持で教壇に立つようにしています。相手を説得しようと思ったら、ネガティブオーラ攻勢にも勇敢にかつ明るく立ち向かわなければならないようです。 6.相手が求めているものにフォーカス 相手が欲している情報を提供するのが、相手を説得する一番の近道だと思います。そう考えると、相手からの質問は最高の「説得材料」なのです。また質問と応答のやりとりを通して、「この人は、何かを投げるとそれ以上のものを返してくれる人」と思っていただけたら、そこから先のコミュニケーションはスムーズに進むことでしょう。相手から質問がない場合には、こちらからいろいろと質問を相手に投げかけてみます。私も、生徒さんの反応が読み取りにくいとき、彼らにいろいろと質問を投げかけるようにしています。説得力の極意----それは意外にも「聞いて、聞いて、聞きまくる」なのかもしれません。 7.自分以外の存在を活用 自分自身の力だけで相手を説得するのが難しい場合があります。そんなときは、相手が認めている人物、あるいは相手にとって身近な人物の力を借りてみましょう。たとえば、教室では、かつての受講体験者に成功体験を語ってもらうことがあります。講師からのアドバイス以上に、相手の心に届くのは、「自分とほぼ同じ環境にいる人がこれだけできるのだから、自分もがんばればできるに違いない」という気持になるからなのだと思います。「1日1時間以上の勉強を2ヶ月続けると、相応の成果が期待できる」というメッセージも、講師が言うのと、同じ環境で学んでいる受講者が自らの体験を語るのとでは説得力が全然違ってきます。 |
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