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手が回らない産科医療の実態/神奈川県内
- 社会
- 2007/10/14
県内各消防の救急隊が妊産婦らを産婦人科に運ぶ際、医療機関に五回以上受け入れを拒否されたケースが二〇〇四-〇六年で四十八件に上ることが、県災害消防課の集計で分かった。十五回拒否された事例があるほか、搬送完了までに二時間半近くかかったケースも。拒否理由は「別の患者の手術などに対応中」が最多で、医師や分娩(ぶんべん)施設が不足し手が回らない産科医療の実態が救急対応の面からも浮かんだ。
救急隊は搬送の際、原則として妊産婦が日ごろ検診などを受けているかかりつけ医に最初に照会する。だが、受け入れを拒まれたり、夜間で電話がつながらない場合は、産婦人科のある救急指定病院や基幹病院などに問い合わせる。搬送先が決まるまでは応急処置を済ませる程度で現場から動けず、最終的に都内に運ぶこともあるという。
集計は総務省消防庁の全国調査の一環。それによると、県内消防の救急隊が最初の照会先に運べなかったのは〇四年が二百六十一件。〇五年は三百七件、〇六年が三百五十九件と増加傾向だ。
この数字には、県内自治体の二十六消防のうち、横浜や鎌倉など一部の消防が搬送記録の集計方法が異なるといった理由で含まれていない。ただ、横浜市は〇四年に八回、〇五年に十回、〇六年に十一回断られた事例があり、搬送完了まで最大で一時間四十四分を要したと県に報告した。
十五回拒否されたのは川崎市消防の〇四年のケース。結果として横浜市内に運んだが、二時間十三分かかった。〇五年は七回断られたのが最多だったが、搬送時間は二時間二十三分に及んだ。
藤沢市消防は十四回拒まれたことがあるほか、「受け入れ先の医療機関が急に別の患者を引き受けることになったとして、搬送途中に別の施設を探し直した事例がある」という。
医療機関が受け入れない理由は、医師不足や限られた施設への分娩の集中に起因したものが目立つ。最多の「別の患者に対応中」は三~四割を占め、「処置困難」も二割近く。「ベッドが空いていない」「医師不在」などもあった。
受け入れを次々と断られた妊婦が死産した奈良県のケースと同様に、かかりつけ医がなかったため、受け入れなかったのは三年間で九件あった。
県産科婦人科医会の八十島唯一会長は「どの施設も受け入れに努力しているが、奈良のようなケースがいつ起きてもおかしくないほど神奈川の産科医も手いっぱいの状況だ」と指摘している。
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