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社説(2007年10月14日朝刊)

[ゴア氏ノーベル賞]

温暖化防止の原動力に

 温室効果ガス、北極の棚氷や氷河の溶解、海面上昇、異常気象―など地球温暖化が生々しい映像で報じられ、茶の間の話題に上るようになった。

 温暖化が人類共通の脅威として認識されるようになったのは最近のことだ。環境問題が地球規模の安全保障の問題として浮上してきた中で、今年のノーベル平和賞には象徴的な意味合いがあるように感じられる。

 ドキュメンタリー映画「不都合な真実」を通じて地球温暖化の危機を訴えてきたアル・ゴア前米副大統領と、温暖化問題の影響などについて研究報告をまとめている国際組織「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の双方に、二〇〇七年のノーベル平和賞が授与されることが決まった。

 ゴア前副大統領とIPCCは、気候変動についての知識を広め、必要な対応策を築くよう呼び掛けてきた。大規模な気候変動は資源の争奪戦を起こし「紛争や戦争の危険性を増大させる」と警告し、「今、行動が必要」と訴えてきた。その功績はやはり大きい。平和賞の同時受賞を歓迎したい。

 ゴア氏はクリントン政権下で副大統領を務め、京都議定書の誕生にも貢献した。ブッシュ大統領と接戦を演じた大統領選後、一千回以上の講演活動などを精力的に続けてきた。

 講演の様子を伝え、豊富な写真やグラフを交えた映画「不都合な真実」は〇七年の米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞。この映画が温暖化への大きな関心を呼び起こした。

 IPCCは一九八八年、世界気象機関と国連環境計画により設立された。地球温暖化に関する各国の科学的研究結果をまとめ、政策決定に生かすことが目的で、五―六年ごとに公表される評価報告書は温暖化対策をめぐる世界の論議に大きな影響を与えている。

 十一月にまとまる「第四次統合評価報告書」には、主な執筆者だけで百三十カ国以上から四百五十人を超える専門家が名を連ねているという。

 環境問題は、国境を超えて、二十一世紀の人類が直面する最大の脅威になっている。国連安全保障理事会も四月、初めて温暖化問題を取り上げた。

 温暖化防止は安全保障の問題として受け止められるようになった。国益重視の国家安全保障の思考だけではこの問題を解決することは難しいだろう。

 温暖化防止の問題は待ったなしだ。ノーベル平和賞の話題を各国の交渉を促す原動力へと変えていきたい。

 米国や中国なども巻き込み、「ポスト京都」の枠組みを構築する必要がある。国益を超えて、温暖化防止の成果を結実させていくことが大事だ。



社説(2007年10月14日朝刊)

[政務調査費]

透明性の確保を高めよ

 議員らに支給される政務調査費の使途に不透明な点があるとして、全国的に問題となっている中、沖縄県議会でも透明化を目指した動きがでてきた。

 県議会の各会派は、政務調査費の収支報告書に領収書添付を義務付ける方針で合意した。

 政務調査費は地方自治法に基づき、地方議員の調査研究に必要な経費として、自治体の予算から議員や議会会派に支給されている。

 民間企業で必要経費に領収書を添付するのは当たり前のことだ。議員らの政務調査費は税金だけに、どのように使われているのか、納税者に公表するのは当然である。

 問題はあった。各自治体が定める条例には額や使途の基準はあるものの、ほとんどで領収書添付の義務付けはなかった。議長に提出する収支報告書でも、大まかな支出項目に分かれているだけで、使途内容を細かくチェックすることができない。

 「政治とカネ」が問題となり、国民に政治不信が広がった。そのような状況の中、市民団体が政務調査費の使途が不適切として住民監査請求や提訴が相次ぎ、各地の議会でガラス張りに向けて腰を上げ始めているのが現状である。

 県議会が政務調査費の交付に関する条例改正案をまとめるのはこれからだが、参考例はある。

 自民、公明両党の政治資金透明化プロジェクトチームは、政治資金の支出について、一円以上の全支出の領収書を公開することで合意した。この点はぜひ盛り込んでもらいたい。

 また、福井県議会では、領収書添付のほか、誰でも領収書と収支報告書を閲覧できる制度も盛り込んだ条例改正案を可決している。

 県議にはさまざまな活動を通して県政のチェック、施策の立案など、沖縄の発展に努力してもらいたい。そのためにも、納税する県民の目線に立ち、政務調査費の在り方を明確にし、領収書の全面公開を決め、早急に透明性を高めてもらいたい。


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