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薬効かない結核、年間100人推計 厚労省が研究班

2007年10月14日

 既存の治療薬がほとんど効かない「超多剤耐性」(XDR)の結核患者が、05年に国内で結核を発症した約2万8000人のうち約100人いたという推計が、財団法人・結核予防会結核研究所(東京都清瀬市)の調査結果から判明した。この患者は長期入院して治療しても感染性がなくならないことが多く、いつまで入院させるか議論がある。厚生労働省は長期入院患者らの実態調査を行い、感染拡大防止と人権配慮を踏まえた対策を検討するため、研究班を立ち上げた。

グラフ

結核患者数の推移

 XDRは致死率が高い結核。症状は通常の結核と同じで、菌を培養検査しないと判別できず、患者数の把握が難しい。

 通常の結核は、4種類の薬を半年ほど飲めば大半が治る。だが途中で服薬をやめるなど治療に失敗すると、複数の治療薬が効かなくなる多剤耐性(MDR)が発生。ほかの薬による治療が必要になり、治癒に2年はかかる。これらの服薬なども効かないのがXDRだ。

 多剤耐性の発生経緯は(1)治療失敗のほか、(2)以前に結核を発症して治療を受けたが肺に残っていた菌が再発時に耐性を持った(3)他の患者から感染――とみられる。

 同研究所は8月、90年代以降の全国調査と05年の新規患者数(約2万8000人)から、MDRの発症率を初めて算出。(1)が71人、(2)が132人、(3)が113人で、計316人と推計した。

 また同研究所を中心とする結核療法研究協議会が06年にまとめた調査では、02年に全国から採取した3122人分の菌のうちMDRが55、XDRがその3割を占める17だった。この3割をMDRの推計患者数316人にあてはめると、XDRは約100人とみられる。

 厚労省は9月に一般の結核患者の入退院基準を見直しており、厳密な検査で感染性が高いとわかれば、入院勧告や就業制限をする。だが、この基準をXDR患者らに適用すると、いつまでも退院させられない事態となる。このため厚労省は、新たな基準が必要と判断。医師や法律家らによる研究班を設置した。

 研究班長の加藤誠也・同研究所副所長は「治る見込みもなくいつまでも入院させるのは人権上問題がある。『自宅隔離』の措置も検討したい。それでも、医師の指示を守らず感染が広がったらどうするか。国民意識などを幅広い見地から考えたい」と話す。

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