各地で「かかし」が大活躍だ。といっても、稲田でスズメににらみを利かせる本業ではなく、催しや啓発活動などの場でのことである。
府中市上下町では矢野温泉公園四季の里や商店街を会場に、恒例の「上下かかしまつり」が二十八日まで開かれている。三十五回目の今回は、日本列島を抱えた福田康夫首相や、女子柔道の谷亮子選手の金メダル姿など約六十点のユーモラスなかかしが、訪れる人々の目を楽しませている。
「秋の行事がなく、観光客を呼び込めるものはないかと考えて思いついたようです」と実行委員会は経緯を語る。人気者や世相を映した題材を中心に、年々アイデアや技術も磨かれ、地域の一体感も増すなど欠かせない存在となっている。
かつては実りの秋に田畑を守る「へのへのもへじ」顔のかかしをあちこちで見掛けたが、鳥を防ぐ効果は上がらず次第に消えていった。しかし、秋の風物詩としての親しみや目を引きやすい点が買われて新たな活躍の舞台を得た。
上下町のように歴史を重ねる所がある一方で、近年、新たにかかしまつりやコンテストを始めるところも増えている。そのほか、地域の売り込みやイベントの広告塔、さらには交通安全の呼び掛けなど担う役割は多彩だ。
目線は鳥から人へ、撃退から呼び込みへと攻守所をかえたかかしたち。地域に豊かな実りをもたらすことだろう。