特待生問題について、日本高校野球連盟が外部の識者から意見を求めるため設けた有識者会議が議論を終え、脇村春夫高野連会長に答申した。
二〇〇九年度以降、年度登録する野球特待生を各学年五人以下とするよう努める。採用基準は野球の能力に優れ、品行方正で学業も劣らないこと。中学校の校長の推薦書を必要とする―などの条件をつけた上で、野球特待生を容認する内容である。
特待生問題はプロ野球・西武の裏金問題に関連して実態が表面化した。高野連は野球を目的にした金銭の授受を禁じた日本学生野球憲章に反するとし、特待生を認めていない。答申はこれを踏まえ、憲章見直しも求めた。
答申が中学校長の推薦書を要するとした点は、野球ブローカーの介在を排除する上で役立つだろう。だが、特待生の人数制限は有識者会議メンバーの意見が分かれ、ガイドラインにとどまった。違反に対する罰則は設けず、三年間様子をみて必要性を再検討するとした。罰則がなければ抜け道を探る学校が出てきてもおかしくない。
問題は、答申を受け高野連がどう具体化するかである。高野連は十一月末までに対応を決めるとしている。
特待生の人数は努力目標でなく、ルール化して罰則も設けるべきだろう。特待生の存在と学生野球憲章をどう整合させるのか、憲章の見直し作業を急ぐ必要がある。途中で野球ができなくなった生徒が学業を続けられるための措置も求められよう。
高野連は野球特待生の現状を放置しながら、問題化すると学生野球憲章をたてに特待生禁止に動いた。明確な基準を伴わない全国実態調査を行い、八千人近い野球部員を処分した。高校側だけでなく社会が高野連の対応に不信を募らせている。
答申は「加盟校との意思疎通が不十分」として、高野連の在り方にも注文をつけた。高野連は自らの体質の改革にも取り組まなければならない。特待生問題を通じ、高野連がどう変わるのかが問われているといえる。
しかし、今回の問題の根本には、高校野球を学校教育の中でどう位置付けるのかという問題が横たわっている。答申はその点に踏み込んでおらず、直面する課題への対処策を示しただけだ。
高野連が原則論を言い、高校側が生徒集めや勝利を求めて現実路線を走るなら、両者の間には溝が残ったままになる。野球以外のスポーツも含め、教育の中でのスポーツの在り方をあらためて議論しなければなるまい。
日銀は金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を現行の年0・5%程度のまま据え置くことを決めた。米住宅ローン問題の市場や景気への影響を見極めるためで、利上げ見送りは妥当な判断といえよう。
決定会合では、議決権を持つ政策委員九人のうち八人が利上げ見送りに賛成し、一人が九月の会合に続き、現状維持に反対した。
会合後に記者会見した福井俊彦日銀総裁は、米住宅ローン問題の影響について「世界経済に不確実性がある」と述べ、国際金融市場についても「一部(状況が)改善してきたが、全体的にはなお不安定」との認識を示した。引き続き、欧米市場や米国経済の動きを注視していく意向を表明したわけだ。
日銀は国内景気は堅調に推移しているとみている。しかし、米住宅ローン問題の沈静化や実体経済への影響を見通すのは容易であるまい。欧州中央銀行は今月、市場動向を見極めるため利上げを見送った。来週ワシントンで開かれる先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)も、金融市場の安定回復が主要議題となる見通しだ。
来年三月で任期切れとなる福井総裁は、任期中に利上げして金利水準を正常化させるシナリオを描いている、といわれる。欧米の中央銀行の政策判断に加え、国内で最近、パンや食用油などの値上げが相次いでいることも考慮しながら、慎重に利上げ時期を探ることになろう。
市場では利上げ環境はだんだんと厳しさを増すとの見方が強い。経済がグローバル化する中、突出した動きをするのは難しかろう。福井総裁はシナリオを実現できるかどうか、正念場といえよう。
(2007年10月13日掲載)