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2007年10月10日
ジャン: 10月から「郵政民営化」がスタートしたって聞いたけど。
中野記者:郵便局が会社になったんだよ。明治時代から136年、郵便局はずっと国がやってきた。これがトヨタ自動車やソニーと同じふつうの会社に変わったんだ。
ケン: どうして会社にしたの。
中野記者: ふつうの会社はお客さんを大事にしないときらわれちゃう。でも、今まで郵便局は国に守られ、サービスはあんまり良くないといわれていた。民営化で、もっとお客さんのために商売するようになると考えられている。
ポン: いっぱい会社ができるみたい。郵便局がばらばらになったの。
●郵便局の経営が国から民間へ、五つの会社誕生
◆見た目はそれほど変化なし 四会社まとめる「日本郵政」
中野記者: 郵便局は今までどおりだけど、仕事の種類で会社を分けたんだ。今までの郵便局の仕事は、3種類あった。お手紙とか、はがきを運んでくれる郵便。みんなのお金を預かってくれる貯金。もう一つは、病気になったときのために備えておく簡易保険。3つは、今度から別の会社になるよ。
ジャン: あれ? 5つになるって聞いたけど。
中野記者:そう。4つめの会社が「郵便局会社」。みんながいつも使っている郵便局の窓口にいる人たちの会社なんだ。その4つの会社をグループとしてまとめるために、5つめの「日本郵政」がある。お父さんみたいな会社だね。
ケン: 郵便局は何をするの?
中野記者:さっきの3つの仕事は、多くはこれからも郵便局会社の人たちが窓口になる。郵便、貯金、簡易保険の会社は、みんなとのやりとりを郵便局会社にお願いするんだ。サービス内容も今までとあまり変わらないから、変わった感じはしないんだね。
ポン: せっかくふつうの会社になっても、いいことはないのかな。
中野記者:だんだん変わるよ。新しい会社は郵便局にコンビニエンスストアをくっつけたり、競争相手だったほかの会社と宅配便の仕事をいっしょにすることを決めたり、いろいろ考えているんだ。
ジャン: お金を送るときの手数料が高くなったって聞いたけど。
中野記者:それも、ふつうの会社になったからなんだ。今までは国がやっていたから必要なかった税金が、ふつうの会社だとかかっちゃう。そのお金の分が高くなった。
●地方の集配サービスに不安 分野別会社に困る利用者も
ケン: 前に、国会で「民営化反対」とかさわいでいた。
中野記者:ふつうの会社なら、もうからない商売はやめるよね。今でもいなかの郵便局は、赤字が多いんだ。でも、いなかに郵便を運ぶのも大切な仕事。それを心配した国会議員が反対した。参議院では反対のほうが多かったけど、当時の小泉首相は「民営化は改革の本丸(中心とする部分)」として、民営化の法律を国会で通すために衆議院を解散した。選挙の結果は、小泉さんへの支持がだんぜん多くて、民営化が決まったんだ。二〇〇五年の秋のことだよ。
ケン: いなかのおばあちゃんの家の近所の郵便局は閉まっちゃったよ。
中野記者:法律は、郵便局や郵便のネットワークを今より悪くしないことを義務にしている。でも、いなかの小さな簡易郵便局では、後継ぎがいないなどの理由で「一時閉鎖」が増えている。日本郵政の西川善文社長は「ネットワークは守る。急いで後継ぎを探したい」って言っているよ。
ポン: 郵便局がまた開いたら、助かるんだね。
中野記者:だけど、会社が別々になる関係もあって、郵便配達の人に貯金をおろしてもらうようなサービスも廃止された。困っているお年寄りも多いんだ。
ジャン: どうにかならないの。
中野記者:今の法律ではかんたんに解決できないけど、国会は法律を変えられる。今、都市と地方の格差は大きな社会問題になっているし、困っている人が多ければ、見直されるかもしれないよ。
●きょうのポイント
▽10月から「郵政民営化」がスタートし、これまで国が経営してきた郵便局がふつうの会社になった。「日本郵政」という会社のもと、郵便、貯金、簡易保険、郵便局の4つの会社に分かれて仕事をする。
▽民営化にする法律は、小泉さんが首相のときの2005年秋に成立した。民営化を進めると、地方に郵便を運ぶサービスが保てるかどうかなどが心配され反対する国会議員もいた。しかし、民営化すべきかどうかを国民の審判をあおいだ総選挙で、小泉さんへの支持が多くて民営化が決まった。
▽法律は、郵便局や郵便のネットワークを今より悪くしないことを義務にしているが、いなかの小さな簡易郵便局は、後継ぎがいないなどの理由で一時的に閉める郵便局が増えている。また、別会社になったことで、今までのサービスが受けられずに困るお年寄りも多い。
中野和郎記者(朝日新聞経済政策グループ)
提供:朝日学生新聞社