卒業生に多くの政治家や文化人がいる「東京都立小石川中等教育学校・高校」(文京区)の隣に来春、私立「村田学園小石川女子中学校」が開校する。ところが、同じ「小石川」の名前を使うことをめぐり、都立側が「生徒や受験生が混乱する」と抗議したことに、私立側は「地名なので問題ない」と反論。両校は「混乱を避けるため努力する」「校名表示で区別化を図る」など異例の協定を結んだ。校名論争は、私立側が校門の看板を付け替えるなど譲歩する形で決着した。
都立小石川は、民主党の小沢一郎代表、俳優の加藤剛さん、狂言師の野村万作さんらが卒業した名門校。1918年に創立され、旧小石川区(現文京区)に学校があったことから50年に現在の校名になった。06年4月に中等教育学校を開校し、中高一貫となった。
一方、小石川女子中は、元々あった村田女子高校に併設される中学。学校法人村田学園の亀田光昭理事長によると、村田女子高は02年から定員割れが続いたことから、高校の定員を減らして中学を新設。6年一貫教育で進学実績を伸ばしたいという。中学も高校と同じ校舎を使う。
かみついたのは、都立小石川の栗原卯田子校長だ。最寄り駅近くにある案内板や校門に掲げた看板は「村田学園」の文字は小さいが「小石川女子中学校」の文字が数倍の大きさ。女子の制服は、都立側はネクタイ、私立側はリボンと異なるが、同じ三つボタンのブレザー。スカートは同じチェック柄で、基調が都立側がグレー、私立側はピンク。栗原校長は「制服が似ていると思う人もいるはず」と話す。
これに対して、亀田理事長は「地名を使った校名で問題ない。違うコンセプトの新しい学校を強調したかったため、小石川女子中の文字を大きくした。制服は全く異なるもの」と反論していた。
しかし、話し合いの末、亀田理事長と栗原校長は8月(1)受験生を含め、生徒が混乱しないようにお互い努力する(2)小石川女子中は看板やパンフレットに必ず村田学園の名前を付け、小さかった村田学園の文字を大きくし、区別化を図る(3)今後も緊密に連絡を取り合い、問題があれば対処していく--との内容の協定を結んだ。
中学受験に詳しい森上教育研究所の森上展安社長は「私立側が名門・都立小石川のイメージを利用したのだろう。経営に苦しむ私立側にとって苦肉の策だろうが、都立側もおとなの対応をしても良かったのでは」と話している。【三木幸治】
毎日新聞 2007年10月13日 15時00分