瀬戸内市の牛窓町観光協会が、海面に映る月明かりが道路のように見える光景を「ムーンロード」と名付け、観光資源としてPRするという。先日の本紙に掲載された「月の道」の写真を見て、かつて地上にできた一筋の道を思い出した。
「桑田ロード」である。プロ野球・巨人のエースだった桑田真澄投手が、十数年前に作った。二軍用グラウンドの外野フェンス沿いに、コンパスで円を描いたようにくっきりと芝生のはげた道が現れたのだ。
桑田投手は小飛球を捕ろうとしてダイビングキャッチを試みた際、ひじを傷めて手術した。試合に出られない間、黙々と走り込みを続けた跡が「桑田ロード」と呼ばれた。
その後、奇跡の復活を遂げ、今年は大リーグに挑んだ。春先に審判とぶつかり足首に重傷を負ったが、それも克服してメジャーデビューを果たした。だが、足首のけがをひきずり手術を余儀なくされた。
大リーグを解雇されたが、リハビリをして復帰を目指すらしい。現在、三十九歳。年齢的には苦しいが、石田雄太著「桑田真澄 ピッチャーズバイブル」によると、二十歳のころの本人からこんな話を聞いたという。「夢の風船を一つずつ割っていきたい」とし、一番遠い先の風船は四十歳を超えても投げることだと。
最後の風船を追って桑田投手はまた走り始めるだろう。「桑田ロード」は続く。