「政治とカネ」の問題が後を絶たない。自民党だけでなく民主党にまで広がり、次期総選挙をにらんで双方のトップを標的にした泥仕合の様相を呈してきた。
衆院予算委員会で、民主党は福田康夫首相の疑惑に質問の矛先を向けた。首相が代表を務める選挙区支部が、公職選挙法で禁じられた国と請負契約を結んでいる企業からの寄付を受けていたという。首相は「知らなかった。大変なミスだが故意ではない」と釈明する一方で、「政治とカネにまつわる問題は野党の方々にもある」とけん制した。
民主党の小沢一郎代表を意識しての発言だろう。小沢氏の資金管理団体が政治資金で購入した都内のマンションを財団法人などに賃貸して家賃収入を得ていたことが明らかになった。政治資金規正法では、預金や国債など三項目以外の運用を禁じている。小沢氏は記者会見で「利殖目的でなく、違法には当たらない」との認識を示したが、まぎらわしい行為である。
民主党では渡部恒三衆院議員も、自らの政治団体が活動実体がないマンションを「主たる事務所」として届け出ていたことが判明し、党最高顧問を引責辞任している。
衆参両院で主力を占める両党のトップらが、疑惑を指摘される事態は嘆かわしい。説明責任を国民にどこまで果たせただろうか。事実の解明は大切だが、暴露合戦と非難の応酬に終始したのでは何も前進は得られない。
先の参院選で、自民党が大敗して衆参両院の「ねじれ現象」をもたらした要因の一つは、安倍政権のもとで相次いだ閣僚たちの「政治とカネ」をめぐる不祥事や不適切な対応への不信感だった。今国会の使命は、その反省に立って「ザル法」と批判されている現行の政治資金規正法を改正して実効性を高めることにこそあるはずだ。
民主党は、すべての政治団体を対象に人件費を除く一円以上の支出に領収書の写しを添付することを義務付け、公開する政治資金規正法再改正案をまとめ、今月中旬にも参院に提出する方針だ。一方、自民党の改正案の骨子は政党交付金の支出は一円以上の全領収書を公開するものの、献金など他の政治資金の支出については「一円以上の一定額を総務省で公開する」としている。全公開を主張する連立政権を組む公明党と合意に至っていない。
日本の政治や政治家が資質を根幹から問い直されている。政局とせず、チェック機能が働き、抜け道を許さない透明性高い法改正を与野党挙げて実現するよう望みたい。
京都議定書が定める二酸化炭素など温室効果ガスの削減目標達成に向け、化学や製紙など主要十三業界が従来の削減目標をさらに三割程度引き上げることになった。
経済産業省と環境省の合同審議会で各団体の代表が新たな目標として明らかにした。極めて難しい状況に陥っている京都議定書の目標達成だが産業部門が一歩、前進させたといえよう。
政府は京都議定書で二〇〇八―一二年度の年間排出量を九〇年度比で6%削減する義務を負っている。それは国際公約でもある。だが、〇五年度の実績が7・8%増と逆に膨らんだことから、現在の対策を進め排出量を減らしたとしても、二酸化炭素換算で二千―三千四百万トンの追加削減が必要になる。
今回、危機感を抱く政府サイドからの働きかけを受け日本化学工業協会が10%減だった目標を20%減と倍増させるなど主要業界が大幅引き上げに踏み切ったことで追加削減必要量の約四―七割を一気に賄える計算になる。一方、省エネ余地が少なく削減目標の上積みが困難な電力、鉄鋼などの業界も温室効果ガスを削減したとみなされる排出権の取得量を拡大し、従来目標の達成を目指す方針だ。
しかし、それでも目標達成への道程は険しい。政府試算では一〇年度、産業部門は8・5%減少するがオフィスや家庭部門が大幅に増加、全体の排出量は0・9―2・1%増えるのだ。国民の意識改革を促しビルや家庭での削減を徹底しなければならない。具体策をどう打ち出すのか。福田政権の手腕が問われる。石油など化石燃料に課税する環境税の導入、温室効果ガスの排出量取引の拡充方法などの議論を加速させるべきだ。
(2007年10月12日掲載)