2007/10/11(木)
■秋岡梧郎?
ずんぐりと頑丈な身体付きで、首は短く太く、顎の張った四角い顔にやや赤茶けた口髭をつけた館長の熊本氏は、一見してはいかにもこわそうな実際的行動の人といった感じだったが、こと図書館の話となれば、時間も何も忘れきるといった一種のマニア染みた熱心家だった。(p.112)v5
氏の言うところによれば、この貴い文化の仕事である図書館というものが、日本ではいつまでたってもおざなりのお役所的仕事の域でお茶を濁していて一向に発展しないのは、第一に館員の待遇が実に悪いためである。待遇が悪いのは、上に立つ政府も一般社会も図書館の文化的意義なんかは全然念頭にないためで、それゆえ少しでも優秀な人間は、図書館なんかを一生の仕事にしようなんて考えは馬鹿らしくて抱かない。時に優秀な人間がはいっても、たちまち幻滅するか、ほとんどが一時の腰かけのつもりで、他にいいと勤め口がありさえすれば、さっさと出て行ってしまう。それゆえ後に残って一生図書館にしがみついているような連中は、多くはそれこそなんの覇気も理想もない、ひたすらただわずかな給料を失うまいと小心翼々としている勤め人根性のものだけだ。(p.114)
異常な熱心家の極めて冷徹な認識(・o・;)
2007/10/9(火)
■[洋書店][エロ本]裏丸善学派?
ネット上のごく一部で話題の「ワンダーランド」なる洋書店。わちきもオモシロがって調べてみた。
東京圏の書店事情であれば、現在もつづく『東京ブックマップ』を調べるのがいいだろう、と見たら、あった。ちなみに友人はこれの過去の分をぜんぶ揃えているやう(^-^*) 古書価は100円くらいかな。古書会館の古書展などで注意してると転がっている。
で、くだんの書店だけど、専門店扱いで比較的詳細な記述があった(専門店じゃないような街の本屋さんだと、古い電話帳とかで住所や活動時期がわかるのがせいぜいか)。
地下鉄「神保町」より1分。神保町交差点近く大雲堂ビル3F 3233-****
映画・呪物・音楽・スポーツといったホビー関係の洋雑誌や洋書が目立つ。他にも、SF・ミステリー・ロマンス・コミックス・ポルノなどやわらかめのものが多いが、文学・心理学・精神分析・アメリカ社会といったかたい分野の本もある。300種を越す洋雑誌とペーパーバックが中心の楽しい店。ディスカウントも行なっている。11:30〜18:00まで。日は休み。(p.81)
東京ブックマップ. 1997-98 / 東京ブックマップ編集委員会. -- 書籍情報社, 1997.2
1999-2000(1999.1刊)には同じ場所に違うお店が入っているから、1997年か1998年に閉店したことになる。
どうやら正式名称は「洋書ワンダーランド」らしい。
いやぁ(・∀・`;)
わちきもたまに行ったのを思い出したよ。
ってか、大学生になった時に、『ブックマップ』片手に神保町の本屋はほぼ全部まわったような憶えが。
んで、ワンダーランドに行ってビックリしたことはアメリカのエロ雑誌があったこと。上記にも「ポルノ」があるとちゃんと記述されているが…
(かきかけ)
■[図書館小説]新田潤
秋岡の饅頭本にのったコゴウチさんの紹介から図書館でバイトしてた人が小説家になった話を知った。
新田潤作品集 / [新田潤著] ; : セット - 5. -- 一草舎出版, 2005
(http://homepage.mac.com/takashisa/issousya/nitta.html)
んで。
うはうはo(゚ー゚*o)(ノ*゚ー゚)ノ 「図書館小説」たくさん!
○第二巻
・「永遠の求愛者」(『娘ごころ』(昭和17)より)
太田秀子(モデル:小河内)の前の児童室担当者(初代?)宮原(モデル:柏原)が、図書館を辞めたあとも太田に未練を持っている様子を描く。この小説で柏原は、躁鬱気質の芸術家肌の人物に描かれている。小河内は、恋愛に関しては酷薄な感じに見えるような書き方をされている。
・「少年達」
図書館の出納手たちの生態。図書館業務はあまり出てこない。出納手は図書館には無関係なところへ散っていく。
○第四巻
・「未完の主人公」(初出『文明』1(3)(1946.4)p.109-129)
新田潤が勤めていた実業図書館(京橋図書館内)。その最初のお客(自称・図案家)はマント泥棒だった顛末。実業図書館の成り立ちなどについても略述。また、挿話として、京橋図書館の隣の築地署で起きた小林多喜二惨殺事件の日の目撃譚あり。
実業図書館の成り立ち部分については、『秋岡著作集』の小河内寄稿部分に転載あり。小河内は新田が実業図書館の担当だったこと、京橋図書館員が小説のモデルにされたことを『秋岡』に書いている。おそらく、自身が「一時代の片隅」のモデルになったことを知っていたと思われる。というのも、自著『公共図書館とともにくらして』(1980)において、左翼運動との関わりを示唆する向きがあるので明確に否定しておく旨書いているからである。
○第五巻
・「一時代の片隅」(初出:『社会(鎌倉文庫)』4(5)(1949.5) p.117〜128)
異常に熱心家の館長(モデル:秋岡梧郎)と、左翼運動に関係していると思われる婦人図書館員(小河内)のこと。
ちなみにモデルの小河内は自著(1980)で自分の左翼運動との関わりを明確に否定している。
にゃんだか、新田先生、柏原と、小河内さんと、秋岡梧郎の3名を、いろんなところに出して来てるよう(・o・;)
神保町のオタ 『さすがの古本通も「コクテイル」は行ったことないみたいだすね。』
shomotsubugyo 『いや実は先週末初めて入ろうとしたら改装中で入れず(>_<)でも古本屋のウワサばなしは憚られるかも( ̄▽ ̄;)』
2007/10/7(日)
■[古本屋]交換会の衰退とネットの興隆と
アンテナに登録したばかりのくまねこ堂さんとこで交換会の衰退について言及されている
うーむ
交換会の衰退?
街の古本屋が宅買いをしてそれが交換会で専門店にながれていくという流通が低下しとるようである、って去年あたりにメープルさんにも聞いたのだった(*゜-゜)
交換会の事務局員たる経営員で、業界事情や資料への勘、相場観などを身につけるという教育機能もあると樽見氏の平凡社新書にあったね。
ブラウジング効果
わちきはべつに勝手に古書業界の次世代を憂えておるわけじゃなくて、交換会の先に古書展があるのでわちきが困るなぁと案じておるのだわさ(図1を参照)
図1 古本屋による古書流通
不要本 ↓ 古本屋→黒ぽ本→交換会→専門店→古書展→マニア・研究者 ├─→ツブシ └古書サイト→┘ └──白ぽ本→街の古本屋──────→一般人 └──マケプレ→┘
もちろんネットで買うこともしておるが、わちき的には古書会館の古書展で資料物とか(いわゆる「黒っぽい本」を拾うほうが楽しい。現物を手にとって見られるというのは、新しい発見を生むのだ。って、おなじことを図書館用語でいいかえると、
ブラウジングにより未知文献を見つけられる
とゆーことになる。
上記図を街の古本屋を駆逐したブコフにあてはめるとよくわかるんだが、ブコフだと「黒っぽい本」がまるごとツブシになっちまうので、マニア・研究者にはあまりありがたくないのだ。
図2 ブコフによる古本流通
不要本 ↓ ブコフ→黒ぽ本→ツブシ ├─→ツブシ ┌→セドラ→マケプレ→一般人 └─→白ぽ本→ブコフ(店頭)────→一般人
ところで。
電脳せどり
ちなみにマケプレで古書・プレミア本を販売し、暴利をあげている一部の「電脳セドリ」はつぎのとおりなので…
図3 電脳せどりの位置づけ(図1に付加)
不要本 ↓ 古本屋→黒ぽ本→交換会→専門店→ ├─→ └古書サイト→ └→セドラ→マケプレ→一般人
アマゾンしか検索しない一般人に、黒っぽい本・レアアイテムを約四倍の値段で売るということらしい。すごいねぇ(・∀・) 在庫ゼロ・資本ゼロでも多少キモが太ければよいというわけですな。
もちろんこの電脳セドリの成立には、前提としてそもそもアマゾンに所蔵情報をブラ下げる(古本の)親書誌がなけりゃあならんかったわけですが、それは某書誌情報会社(ってどこ(・∀・)?)が書誌データを提供したおかげで解決されちまったわけだし。
ただ結局、これがいくら繁盛しても、大元の、黒っぽい本の供給量はぜんぜん増えんわけだから、わちきにはぜんぜん嬉しくなかったりもする(・∀・)
そこで、将来の有望供給源の話なのだが。。。
かきかけ
通りすがりエース 『2,3年前に、古本屋に売った専門書らしきものが Amazon のマケプレに滅茶苦茶な値段で出たことがあり、そんだけの金を払うのならば同じ内容でもっといい洋書があるのになと。そもそも出来があんまり良くないから売ったので。今なら同じレベルならばもっと良い訳書もあり。
今調べたら売れていなさげ(あたりまえ)、違う出品者まで似たような値段で出してるところが何と言うか。すごいねぇ(・∀・) と。
おまけ Amazonマーケットプレイス 出品者検索など
http://www.512x.net/amazon-marketplace』
shomotsubugyo 『エースさま> ご教授ありがとうございます。
>似たような値段で
マケプレは相場観なしに出してる人がいますからねぇ。相場観という点では日本の古本屋のほうが参考にはなります。って、それでもそれはちょっとほんとうに妥当なねだんより少し高めになるのですけれども』
神保町のオタ 『自動改札機のダウンによる混乱(?)に負けずに、古書会館に「出勤」できたかすら。』
shomotsubugyo 『もちろんしただすが成果なし(>_<)』