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関西の電車、広さより安全 つり革・手すりを相次ぎ増設

2007年10月11日

 関西の私鉄やJRが、相次いで車両につり革や手すりを増設している。混雑が激しく、転倒防止などのため積極的に増やしてきた関東に比べ、関西では以前から「車内をすっきりさせる」といった理由で、つり革や手すりの少ない車両が多かった。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会が6月末に公表したJR宝塚線脱線事故の最終報告書で、乗客の安全を守るために効果があったと指摘したことも影響しているようだ。

写真通路に沿った方向にしかつり革がない従来の207系の車内
写真南海電鉄が導入する新型車両8000系の車内の完成予想図(南海電鉄提供)
写真ドアの前につり革を設置した阪神1000系

 来年春、南海電鉄が導入する新型の通勤型車両「8000系」。7人がけの座席を2人・3人・2人に区切る手すりが設置され、座席両端に仕切り板も設けられる。

 同社は「お客様が手すりに腕を押しつけられるなど、混雑時のじゃまにならないように」と、通勤車両に座席両脇の手すりを設けてこなかった。しかし、06年12月に設計を始めた8000系は「手すりがより安全を高めると判断した」と、考え方を根本から転換した。宝塚線脱線事故が背景の一つにあるという。

 同事故では、快速電車が05年4月に脱線、乗客ら107人が死亡した。車両は91年に導入された207系。それまで座席両脇にあった手すりをなくし「車内を広く見せる」デザインで、つり革も通路に沿った方向にしかついていなかった。

 今年6月の事故調査委の最終報告書は、負傷者の聞き取り調査から、事故車両が停止するまでつり革や手すりにつかまっていた乗客のうち骨折した割合が約8%だったのに対し、早い段階で手が離れた乗客は約36%が骨折したと分析。つり革、手すりにつかまることで被害が軽減された可能性があると指摘した。

 JR西日本は事故後から車両の改良に取り組み、05年12月に登場した207系の後継車種321系に、通路と交差する方向のつり革を増設。さらに、事故調査委の最終報告書を受け、207系も同様の方向につり革を増設することを決め、9月に国交省に報告した。

 207系や321系への手すり増設は未定だが、JR西は「今後、鉄道総合技術研究所などと、望ましい車内設備のあり方を研究していく」としている。

 阪神電鉄が09年春からの近鉄との相互直通運転用に新たにつくり、10月5日から特急、急行を中心に走らせている新型車両1000系では「より安全性を高めるため」ドアの前につり革を6本ずつ設置した。旧型車両も少しずつ同様の改造をしている。これまでドア付近には「混雑防止のため」つり革はなかった。ただ、JRのような通路と交差方向のつり革は「つけすぎるとドア付近に乗客が固まり、乗降がスムーズにいかなくなる」と否定的だ。

 一方、阪急と京阪、近鉄は、現段階で車内設備の増設は特に検討していない。阪急電鉄は、座席両脇の手すりやドア前のつり革がない車両が主流だが、「関東の私鉄やJRに比べ混雑率が低く、体を支えるものの増設は差し迫って必要ない」と説明している。

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