2003年6月2日 更新

第2回TAPSアート展
大阪会場を終えて


 第二回TAPSアート展大阪会場も無事終えることができました。搬入時には遠く広島管理士会の宮崎さんも駆けつけて下さり、多くの方々がボランティアでお手伝いに来て下さったお陰でどうにか12時の開場に間に合いました。叉チラシ配布やポスター貼付にご協力頂いた皆様、沢山のチラシを配布して下さったアライブ兵庫の皆様、ご来場いただいた皆様にはこの場をお借りして心よりお礼申し上げます。
今会場になった大阪国際交流センターは元大阪外語大学の跡地で、現在も留学生用の会館も併設されているためか多くの外国人学生が訪れてくれました。そしてイラク戦争と重なりアフガン難民の子供たちの写真を食い入るように見ていたことが印象的でした。
叉インドやパキスタンの学生がチェルノブイリの子供たちが描いた絵を涙ぐんで見ていました。戦争も核も多くの子どもが犠牲になっていることと、その陰で人知れず死んでいく動物たちも数知れないことを私の拙い英語で説明すると、彼らは日本語の勉強の為にもと言ってパンフレットを沢山持ち帰っていきました。

期間イベントとして、5月3日第一部午前の部でいつものごとく私の紙芝居から始めました。今回は紙芝居をパワーポイントを使って朗読したのですが、大きな画面にでる紙芝居の画像や、ユリコや母を介護するビーグルのゴンタの甲斐甲斐しい姿に、来場してくれた子供たちが涙ぐみながら見つめてくれました。
次に今回のアート展にご協力いただいているイラストレーターの北野玲さんが、『神戸いのちの電話』という心の悩み相談を受けるポスター公募で先生の作品が採用され、そのときの応募動機や製作段階における先生の心模様などをお話頂きました。またTAPSアート展を機に先生が反戦活動を開始され、ご自分のHPで―――TAPSアート展は、東京会場/大阪会場と場を移しながら、ぼくに様々な機会、様々な示唆を与えてくれました。それはぼく個人の絵画技術を使うことにより、社会の変革、世界の貢献に少しでも役立つことが可能なのだ、という新たな発見でした。この新たな発見、新たな喜びは、今後のぼくの制作方針の根幹をなしてゆくものであると、いまではそう確信しています。――――とご紹介下さったことは何よりも嬉しく思いました。先生のお言葉を拝見して私はアート展を開催した意義を感じました。これからは保護団体や動物愛護家だけではなく、北野先生の様にそれぞれの才能を生かして命を尊ぶ社会を作っていこうと立ち上がって下さるアーティストの出現を私は心待ちしています。そして有名な歌手やバンド、或いは役者が舞台の前で一言犬猫を捨てないでと語ってくれればどんなに多くの命が救われるか計り知れません。

その後、あの一際目立つ黄色い虐待防止のポスターを全国に配布した、えひめイヌ・ネコの会代表の高岸ちはり代表からは、地元小学校にたいする愛護精神育成活動のお話を伺いました。高岸さんは小学校で講演されるときは子供たちに如何に興味を持たせ、彼らを飽きさせずに話を進めるため様々な小道具を使うそうです。沢山のグッズが壇上に次々と並べられてとても楽しい雰囲気でお話しいただきました。そしてそれらもご披露いただきながら、テレビでも有名になった『目の見えない団地犬・ダン』の紙芝居などを一部見せていただきました。本当は大阪アート展期間イベントで一番最初に講演をお願いしたのですが、お仕事の都合上開催ぎりぎりまで予定が解らなかったため、少時間でのお話しかしていただけなかったことがとても残念でした。愛媛での活動などもっともっと詳しくお尋ねしたかったのですが、ご自宅の猫ちゃんの具合も悪く、終わり次第とんぼ返りなさいました。そんな状況でも駆けつけて下さった高岸さんに感謝で一杯です。
えひめイヌ・ネコの会も四国霊場における捨て犬捨て猫問題では後にお話しいただく香川の鷲谷さん達と協同で4つの県知事に面談に行き、全ての霊場に立て看板を行政に設置させることに成功し、地元でも確実に実を結ぶ活動を展開されています。

シンポジウム 『これからの動物保護活動・次世代に託すために』

午後からの第二部は、まず最初に東京アート展シンポジウムにもお越し頂いた香川犬猫ネットワークの鷲谷代表他2名の方々からパワーポイントを駆使した素晴らしいプレゼンテーションをしていただきました。鷲谷さん達は税金対策として犬猫殺処分問題を取り上げ、市民の意識改革を狙う活動を主体としています。動物問題の対応として、保護団体や個人が助け続けることでは社会は変わらないと明言する鷲谷さん達の主旨を私は心から支持したいと思っています。住民の意識の変革こそが『捨てさせない元栓を閉める活動』であると訴える鷲谷さん達と私は昨年7月に岡山愛護会主催の講演で出会いました。そしてTAPSとしては広くこの考えを全国に浸透させるために、伊勢の緊急意見交換会から始まり、東京、大阪そして11月に開催する名古屋会場でもお話しいただきたいと思っています。大阪アート展でのお話は東京と重複するところがありますので、今回は割愛させていただきます。

二番目には地元関西動物友の会 副代表の岩井秀子さんにお話頂きました。岩井さんは阪神大震災の動物救済を機に尼崎と兵庫県の愛護センターで里親探しの活動を始めたそうですが、何よりも一般の人に保護活動の厳しさを知って欲しい事が願いだと言われました。処分に持ち込む飼い主に対して保健所職員からの説得や避妊去勢の必要性を訴えて貰い、保健所は引き取りの場であるという認識を変えて行く事を力説なさいました。
次に平成12年から13年ペットショップから引き取った犬を殺傷し、大阪の繁華街で街頭募金を集めていた『ダルメシアン事件』において、飼い主を愛護法違反で告発した経緯をお話しいただきました。飼い主は逮捕され有罪判決を受けたのですが、書類送検中にも虐待は続き、この時虐待された犬は岩井さん達が緊急保護をしたものの現愛護法の実効性が無いことを痛感され、愛護法再改正には@虐待の定義明確にし罰則を諸外国並にすることA強制的に所有権を飼い主から剥奪し、合法的に安全な場所に動物を保護できることB虐待で有罪判決が下った飼い主に対しては飼育禁止命令を出せるようにするという3つの要望を出されました。
また現在関わられている京都の多頭飼育現場に於いては、飼い主の責任を重視し、どの様な責任をとらせていくのか弁護士とも話し合い、保護団体としてはアドバイザーとしての立場を位置づけされたことは今後の多頭飼育崩壊問題に大きな示唆を残せたのではないかと思います。今後は占有者としての処分権を獲得して保護団体としての役割を果たしたいとのことでした。

多頭飼育の問題が出ましたので途中でしたがご来場頂いているアークのオリバーさんにも昨年12月京都の亀岡で起こった多頭飼育崩壊事件を伺いました。その現場は犬同士の共食いが起こり悲惨極まりなかったそうで、詳細はアークの会報誌に掲載されていますが、保健所処分では無く、アークは自費で回復の見込みのない犬たちには安楽死という処分を選択しました。アニマルホーダーに対する法律が日本には整備されていないことと、日本人にはこの手のアニマルホーダーが多い理由に、保健所で殺したくない、獣医が健康な犬を安楽死したがらない、そういう理由でホーダーに手渡してしまうケースが多いと仰っていました。ホーダーは精神が病んでいるのと同じであり、多頭飼育者には行政が指導し、近辺から苦情が出れば犬猫を押収することをしなければいけないと力説なさいました。

三番目は動物実験をせずに獣医師資格を取られたひげとしっぽ企画の中野真樹子さんのお話です。中野さんは皆さんご存知のように野生問題、実験動物、そして犬猫問題まで幅広くご活躍されておられますが、まず野生動物の売買問題として通信販売で野生動物を売っている業者のお話から始めていただきました。中野さんがこの業者から一時保護された『チョウゲンボウ=小さい鷹の一種』の様な猛禽類が今日本で大変なブームになっており、2002年1月〜9月までの間でおよそ3500羽の猛禽類が日本に輸入され、猛禽類販売ルートの調査報告として、猛禽を飼う人は20代の若者が多く爬虫類を飼う人に多いこと、日本では特にWB個体といって国内で猛禽が密猟されているとのことです。またハリーポッタなどがフクロウのブームを作ってしまい、ロシア、アフリカが日本にかなりの数で密売しているのだそうですが、100羽 200羽単位で輸送され、日本に到着した時点では半分以上が死んでおり、ワシントン条約U類に入っている猛禽類の輸出規制を強く訴えておられました。衝動買いする人が手に負えなくなって放鳥したり逃がしてしまう問題も増え、日本の猛禽ブームが相手国の生態系を崩していることをもっと認識するべきだと話されました。
大学教育における問題では、アメリカの医大では代替え法を採用し動物を死に至らしめる実習は殆ど無くなったそうです。獣医大ではまだ選択方法になっているそうですが、血管などを埋め込んだウサギやラットの模型で十分練習ができることや、コンピュータシュミレーションを使った方法などをご紹介いただきました。またアメリカではヒューマンソサイエティープログラムといって、地元のシェルターやセンターにいる犬猫を教官の元で獣医学生が無料や低料金で避妊や去勢手術をしたり、あるいは外科的処置を行う獣医大学が増えているとの事でした。その利点として学生が犬猫問題にも目覚め、実験で殺すのでは無く生かすための手術は学生達に達成感を持たせ、保護団体にも資金的に協力し、社会に貢献できるのだという獣医大生自身の意識の変革も持てるということで、この方法を是非日本でも広めていきたいとの事でした。最後に1985年に小学校の教室で犬を飼った先生が最終的には学校側に退職させられ現在も裁判が続いているのですが、当時生徒達とどの様にして2匹の犬を育てていったかという画像を見せていただきました。次世代に動物愛護の問題を如何にバトンタッチしていくかという課題を提供していただき、代替え法の教材を持って全国行脚された2名の北里大学と日本大学の女子獣医大生さんから、全国の獣医大生や教員の方々から様々な獣医大学による実験動物のあり方を聞くことが出来たというご報告頂きました。時間の制約で十分学生さん達のお話を聞けなかったのが残念でしたが、次回に必ず彼女達に発表していただける場を提供させていただくことをこの紙面で再度お約束させていただきたいと思います。

最後に野上さんにお話しいただきました。
アライブで新たに製作された『命はモノですか?』というビデオをまずご紹介いただき、一番肝心なことが法改正で行われなかった理由と今後の法改正に盛り込むべき内容を順次お話しいただきました。今法律の届け出制では営業停止ができない為に生じる様々な虐待問題を無くすためにも、動物取り扱い業者を免許制にしていく必要性からお話しいただきました。
再改正は国民の世論で国が動くわけで、市民の声を高める必要性が重要であるということ。地方条例で行政と市民の協力、協働、飼い主責任の強化、動物虐待の定義と罰則の強化を盛り込むべきであり、特に動物虐待においては、意図的暴力(目に見える暴力)の他に、動物業者施設における虐待は一度に大量に発生する大きな社会問題であるがゆえに、地方の特性を生かした条例作りをするべきであるということでした。また虐待には動物の習性や生理を無視した飼育方法や度の過ぎた調教、あるいは社会的虐として闘犬やショーなどに使われる動物、長距離輸送の方法や輸出入時の移送の基準が無いために多くの動物が死亡している事も話されました。その他屠殺の問題としてヨーロッパでは厳しい規制があっても日本はまだまだ畜産動物への福祉の概念が無いことと、一番の苦痛を味わう実験動物や畜産動物の業者が届け出から外されていることはおかしいのではないかということでした。
これら虐待への対処法として、動物愛護推進員の地位と権限の拡大や動物保護への制度変革を求め、再改正に必要事項として、動物虐待の定義・飼育禁止の措置を設ける・動物愛護推進員の育成と配置・査察制度の導入・動物実験 畜産を除外しない・関連法律を統合する・名称を愛護から保護に変更するの7項目を提案なさり、私たち市民が出来ることとして、適切な飼育の普及や飼えなくなった理由を調査し、引き取り時の啓発や保健所施設の改善、里親探しの協力などで行政との協働方法をお話しいただきました。このほか殺処分数と実験払い下げの推移を表した表や地域の活動成果と世界の動物保護法をご紹介いただきました。

会場からの質問には犬猫の毛皮を使った製品への規制を求めて欲しいことと、保護活動している人の中にも自分の犬猫だけは子どもを産ませたい、里親を探したら問題がないのではと考える人に対してどの様な説得方法があるかという質問がありましたので、例え里親を見つけられたとしても現実に死んでいく命に目を向けて貰って、絶対数を減らす重要性を理解して貰うということと、保護活動家から率先して啓発する意義を知らなければならないという回答をさせて貰いました。その後自分の地元では保健所での成犬の譲渡は無いと言われたが、保健所でも成犬成猫の譲渡をして貰うために再改正案に盛り込めないかという質問には、市民や保護団体が保健所に掛け合っていくことで実現している場所が全国にあるので、法改正に盛り込まずとも解決出きる問題であるとお伝えしました。このときオリバーさんが保健所から子犬を譲渡するとき必ず避妊去勢後でなければ絶対数は減らないし、啓発の意義も薄れるというご指摘を頂きました。

最後に野上さんにはギャラリー会場で改訂版として新しく出版された「新・動物実験を考える」の御著書のサイン会をしていただいたのですが、たった15分で持参した20冊が完売してしまい、野上さんにや多くの方にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
その後夜6時から会場の地下レストランで交流会を開催し、児玉小枝さんご夫妻、TAPSアート展を全面的にバックアップして下さっている東京の動物生命尊重の会代表金木洋子さんご夫妻にも御参加頂き、皆さんに軽いスピーチをしていただきました。また再改正署名の為にアライブが率先して連絡会の様なものを作ってはどうかというアークのオリバーさんからご提案頂きました。そして岩井さんや西田さん、アライブ大阪代表の永井さんにもお話を頂戴し楽しい一時を過ごさせていただきました。

2005年の再改正に向けて来年度は正念場であると思います。それ故日本中の保護団体や愛護家が一丸となって力を合わせて世論を高めていきたいと思います。そしてTAPSは次ぎに続くアート展会場でも更に署名活動に力を入れたいと思っています。
今回の大阪アート展では私個人が母の介護が重なり十分な準備が出来ませんでした。しかしTAPS大阪メンバー他東京、奈良、兵庫、伊勢のメンバーが本当に良く動いてくれました。どんなに疲れていても笑顔を絶やさないTAPSのメンバーを私はやはり誇りに思っています。シンポジウムではビデオとプロジェクターの接続が旨く出来ず、来場者の皆さんにはご迷惑をおかけしましたが、それでも時間内に旨く進行できたのは彼らの俊敏な判断力と責任感の強さだと思っています。
最後にTAPS東京、大阪代表からの御挨拶を掲載させていただき、以上を持ちまして大阪アート展期間イベントのご報告を終えさせていただきます。また7月の九州宗像で開催するTAPSアート展を皆様どうぞ宜しくお願いいたします。

              TAPS代表 濱井千恵

昨年暮れの東京アート展に続き、大阪アート展が終了しました。
動物も人間もみな同じ命という思いのもと、プロ・アマ問わずたくさんの方々に作品を提供していただきました。作家の方が思い思いの感情を絵に描き込め、またそれを見ているお客様のまなざしは、まるで生きている動物そのものを見ているように優しいものに感じられました。動物っていいな、かわいいな、触ってみたいな、大切にしたいな、小さなことでも何か感じていただけたなら嬉しく思います。
          TAPS東京代表 アート展総括  川上由香
                
第二回大阪アート展もお陰さまで盛況の内に無事終了いたしました。GWで各地イベント目白押しの中、アート展にご来場下さった皆様に心よりお礼申し上げます。作品にじっと見入っておられる方々、時にはハンカチで涙をぬぐっておられる方々を見て、アートの持つ強い力を再認識いたしました。このアート展で多くの方に動物のはかり知れない魅力を味わっていただくと同時に、彼らの多くが置かれている苛酷な状況に思いを馳せていただきたい、と願って止みません。
私自身も会場で素晴らしい作品の数々を堪能させていただきましたが、肉沸き血踊る興奮と言えばやはりイベントのシンポジウムでした。野上代表始め第一線でご活躍の方々のスキルフルなお話に感動して鳥肌を立て、会場に漲る皆様方の熱い思いを感じて胸を熱くしました。
若葉マークの未熟者ですがTAPSの「出来ることから始めよう!」を合言葉に先ずは身近な事から、そして来るべき動管法改正へ向けての活動にと微力ながら頑張る所存です。皆様、本当にありがとうございました

                 TAPS大阪代表 川上恵

 会場風景 (画像をクリックすると拡大します)


動物愛護を推進する会 役員 西田さん