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党最高指導部人事で胡錦濤派「圧勝」の裏に見える曾慶紅との「取引」=ウィリー・ラム

2007年10月12日 SAPIO
 年に1度の中国共産党の最重要会議である第17回党大会が「10月15日から開催」(新華社電)と決まった。同時に、最大の焦点である最高指導部人事が固まった。
 
 党政治局常務委員会メンバーでは、「辞職届を胡主席に提出した」と、一部香港メディアが大々的に報じた曾慶紅・副主席の残留が大きなサプライズだ。さらに、新任の4人がすべて胡錦濤閥であることも予想外。
 
 北京の中国筋によると、常務委は2人減って7人になり、3人が留任、6人が退任、4人が新任となる。残留するのは曾副主席のほか、胡錦濤・国家主席と温家宝・首相の3人だけ。
 
 退任する6人は李長春・常務委員(イデオロギー担当)、呉邦国・全人代委員長、呉官正・党中央規律検査委員会書記、羅幹・常務委員(政法担当)、賈慶林・中国人民政治協商会議(政協)主席、黄菊・筆頭副首相(すでに死亡)。
 
 新任はすべて胡錦濤閥で、李克強・遼寧省党委書記(52)、王兆国・政治局員(66)、王剛・党中央弁公庁主任(65)、張徳江・広東省党委書記(60)。
 
 胡主席、温首相以外の担当は、曾慶紅が全人代委員長、王兆国が政協主席、李克強は党務(イデオロギー)全般、王剛が党中央規律検査委員会書記、張徳江が筆頭副首相となる。
 
 新任の李克強は胡主席の後継者と目されており、5年後の第18回党大会で、党総書記に就任する可能性が高い。李は胡主席が共産主義青年団(共青団)でトップを務めていた際の腹心で、自身も共青団トップを経験。王兆国も共青団出身で、閑職でくすぶっていたところを後輩の胡主席に拾われた形だ。
 
 王剛、張徳江の2人は典型的な「風派」(=日和見主義者)。王は2003年から胡主席の秘書長的役割の党中央弁公庁主任を務めており、地方視察や外遊でも、常に胡主席の2、3歩後ろを歩く姿が目撃されていた。張は江沢民・前主席の率いる上海閥の一員とみられていたが、2002年のSARS対策で胡主席に評価されたほか、北朝鮮の金日成総合大学出身という異色の経歴の持ち主だ。
 
 常務委人事については当初、曾慶紅が退任し、李長春と呉邦国が残留すると伝えられてきたが、直前になって大きく変わったのは、曾の権謀術策だったとみられている。
 
 曾は、自らが辞表を出して「引退」を申し出ることで、胡主席と連携して、同じく上海閥の李長春と呉邦国にも引退を迫る。その一方で、胡錦濤閥の4人を常務委入りさせる。これが決まったところで、胡主席が絶妙のタイミングで「曾慶紅同志の力はまだ必要」として、曾の辞表の受け取りを拒否するというシナリオができていたのだ。
 
 曾は前々から胡主席に全人代委員長の座を要求していたが、胡は色よい返事をしていなかった。しかし、自らの後継者である李克強の常務委入りが難しくなるに及んで、胡主席が曾と取引したという見方である。結果的に胡主席の主導体制が完成したのだが、実態は「曾慶紅頼み」の“綱渡り人事”というのが真相だ。
 
 胡主席は今後5年間で、民主化や小康社会など自らの政治公約の実現を目指す。しかし、伍する力を持つ曾慶紅が常務委にとどまったことで、今後も胡と曾による権力闘争が激しくなることも考えられる。
 
(国際教養大学教授)
 
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。

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