防災ヘリに搬入されるニキータ・ルイジョフ君=根室市防災ヘリ基地で12日午前9時18分、本間浩昭撮影
北方領土・国後島で重度のやけどを負った男児が12日、北海道根室市の市立根室病院に緊急搬送された。外務省ロシア支援室によると「全身の30%強に及ぶ熱傷で予断を許さない」ほどで、男児は道庁の防災ヘリコプターで札幌医科大に搬送され、治療を受けている。北方領土からの緊急患者の受け入れは初めて。
国後島南クリル地区のイーゴリ・コーワリ議長兼地区長などによると、やけどを負ったのはニキータ・ルイジョフ君(1歳11カ月)。同島古釜布(ユジノクリリスク)の自宅で11日午後5時半(現地時間)ごろ、鍋で沸騰させていた木の実の汁(ジャム用)を頭からかぶった。病院に運ばれたが、医師が「治療できない」と判断。同7時半(同)ごろ、文書で外務省ロシア支援室に受け入れを要請した。
古釜布港では、7泊8日の予定で滞在していた「ビザなし渡航地震火山専門家訪問団」(中川光弘団長ら18人)のチャーター船が寄港していたため、12日の出航を半日早めて緊急搬送した。同船には母ナタリア・クチュワさん(28)とロシア人医師が同乗。同日午前4時ごろ根室港に到着し、市立根室病院でやけど軟膏(なんこう)を塗ったり、点滴などの応急措置を施した。子供の20%以上のやけどは「熱傷センター」での治療が必要なため、道の防災ヘリで札幌医科大付属病院に転送した。関係者によると、やけどの部位は頭の髪の毛がある部分、左肩半分などに及んでいるという。同病院は、ニキータ君の容体を見ながら、皮膚移植手術などを検討するとみられる。
搬送に立ち会った市立根室病院の看護師は「かなり激しいやけどを負っている。やけどは時間がたってからの経過が大事なので(命を救えるかどうかは)分からない」と話した。
同支援室の福島正則主席事務官は「北方四島からはこれまでも患者を受け入れてきたが、緊急患者は初めて。(今回の受け入れは)人道的観点から協力が必要と判断した。日本人との信頼関係の強化につながる」と話している。【本間浩昭】