刻まれた記憶
08月17日

日大山形、やりました。山形県勢で初の夏8強入りです。しかも延長戦で逆転サヨナラ勝ちですからすごいですね。駒大苫小牧の試合をみているようでした。おめでとうございます。日大山形の荒木監督は71年生まれ。延長戦で今治西に得点されても、ベンチ前でじっと自分の選手たちのプレーを静かに見つめていた姿が印象的でした。
さて、八重山商工。率直に言って「力負け」だったと思います。試合後に石垣島の人たちから「祐太の調子が悪かったのかな」と何度かたずねられたのですが、大嶺の調子はこの甲子園でもっとも良かったと思います。たとえば5回、逆転3ランを打たれたあとに2者連続三振で切り抜けています。今までの大嶺投手なら、あそこでガタガタといったでしょう。そこを切り抜けたのは人間的成長を遂げられた証拠だと思います。
じゃなぜ打たれたのかというと、智弁和歌山の打者のスイングが鋭かった……というしかありません。八重山商工の打者の飛球が良い角度で上がってもフェンス際で次々と失速していったのに対し、智弁和歌山の打球は外野手の頭を越えていきました。センターの中里選手は「打球がものすごく速い。打ったらすぐ来る」と驚いていました。他のチームならシングルでとまる打球が、外野手の頭を越えていきました。
投手の潜在能力は、大嶺投手の方が明らかに上だと思いますが、智弁和歌山の橋本捕手の配球も素晴らしいものがありました。あのチームは中谷、岡崎という好リードの捕手をよく作ってくるのです。伊志嶺監督も「132、3キロの球をうまく140キロの球に見せかけていた」と舌を巻いていました。
あのう、石垣島のみなさん、がっかりする必要なんかありませんよ。それが全国レベルの野球ということなのです。島の野球はまだ始まったばかりじゃありませんか。今は八重山商工の選手たちが思い切りプレーできたことに拍手しましょう。
春に横浜に負け、夏に智弁和歌山に負け、勝ちを譲るに値する相手です。選手たちの心と身体には「最強の敵の記憶」が刻まれたことでしょう。あとはそれをいかに後輩たちに伝えていくか、ということです。伊志嶺監督からこんな話を聞きました。
「もう石垣には、大嶺にぃにぃ(お兄ちゃん)みたいになりたい、金城(長靖)にぃにぃみたいになりたいという子どもばっかりよ」
嬉しいじゃないですか。
宿舎で大嶺投手も笑顔でした。
「今日は全部できた。満足できるピッチングでした」
やっぱりそうか。私も思わずこう言って握手してしまいました。
良かったな、祐太。
写真は試合前、球場入りする八重山商工ナイン。