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【放送芸能】

子供アニメの復活を さまざまな職業と、働く面白さ伝える

2007年10月12日 朝刊

 「ジャパニメーション」という言葉があるように、日本はアニメ大国だ。でも、テレビでは深夜の大人向けアニメが増える一方、ゴールデンタイムから子供向けアニメが次々と消えている。ゲームやマンガを原作に、商品展開を狙った作品が主流になっている今、テレビ朝日で始まった「はたらキッズ マイハム組」(日曜午前6時30分)は幼児が対象で、今どき珍しいオリジナル作品。企画した外国人プロデューサーに、アニメに懸ける熱い思いを聞いた。 (宮崎美紀子)

 テレビ朝日で今月七日に始まった「〜マイハム組」は、「マイスター」の称号を持つハムスターたちが、匠(たくみ)の技で人間を助ける物語。合言葉は「人じゃないけど仕事人」。主人公のガウディは、ハンマーで何でも作ってしまう天才的建築家の「大工マイスター」。ほかにもパティシエ(菓子職人)、パイロット、レスキューのスペシャリストなど、さまざまな職能を持つマイスターが登場。職人たちの「元締め」の老ハムスターだけが、マイスターの称号を与える権限を持っている。

 番組の狙いは、子供たちにさまざまな職業と、働くことの面白さを伝えること。企画したのは東映アニメーションのプロデューサー、ギャルマト・ボグダンさん。ルーマニア育ちでハンガリー国籍の三十八歳。

 「外国人の目で日本を見ると、日本はまだ学歴社会。でも、腕を磨いて職人になるという道もある。子供というよりも、一緒に見ている親へのメッセージです。子供に何か才能があれば、それを伸ばしてあげてほしい」

 そう思うのは、かつて日本の伝統工芸について研究した経験があることが大きい。海外から見た日本のイメージは「職人の国」だった。ハムスターが人間を助けるという構図は、町工場や職人が大企業を支えている日本のモノ作り現場の比喩(ひゆ)でもある。

 純粋に子供のためのテレビアニメを作りたいという強い思いもあった。ルーツはルーマニアでの子供時代にさかのぼる。

 「日本のアニメでは『アルプスの少女ハイジ』などの昔の子供向けアニメが好きですね。社会主義の国で、アメリカのアニメはあまりないのに、なぜか日本のアニメは多くて、小学生の時、おかっぱ頭の子は『カリメロ』と呼ばれていた。子供のころに見たアニメが、私のベターアニメーション」

 押井守さんや宮崎駿さんの映画など、世界で高く評価されるアニメはあるが、ハイジのオープニングの、空に飛び立つようなブランコのシーンに勝る感動はないという。

 ルーマニアでの大学生時代は、チャウシェスク独裁政権に対する民主化運動の闘士として活動、逮捕も経験した。その後、父の祖国ハンガリーに逃れ、一九九二年、文部省(当時)の留学生として来日。千葉大大学院でデザインを学ぶうちに、アニメ業界を志すようになった。昨年八月の入社以来、三十以上の企画を出し、今回、初めて作品化が実現した。

 「映画より、アニメの方が表現力がある。まず子供を夢中にさせられる。そして、一生の思い出になる。でも今、日本には、子供のためのアニメが本当に少ない。受けるものはあるが、すべてゲームや漫画が原作で、キャラクター商品での商売を視野に入れている。アニメはエンターテインメント。三十分間、子供を楽しませられれば、それで目的は達成される。もう一度、ただのエンターテインメントとしてのアニメを復活させたい」。ボグダンさんの夢は膨らむ。

 

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