療養病床「継続」6割/県が意向調査
国の大幅削減実施まで5年
慢性疾患の高齢者を受け入れる県内の療養病床のうち約六割に当たる二千二百十六床を、国が二〇一二年度に実施予定の療養病床削減後も、医療療養病床として残す意向を医療機関が示していることが十一日、県のまとめで分かった。介護型、医療型と二種類ある療養病床のうち、特に医療型の七割が療養病床の継続を望んでいる。療養病床に入院している患者の三割に当たる千百一人が、医療の必要度が低いとして退院対象となる「医療区分1」であることも明らかになった。
県高齢者福祉介護課が今年八月、県内で療養病床を有する医療機関(病院三十六施設、診療所二十四施設)に対し、国の削減後にどのような病床や施設に転換する意向があるかを聞いた。同月一日現在、医療療養病床(以下、医療型)は二千八百床のうち入院患者は二千六百四十五人。介護療養病床(同介護型)は七百二十五床で入院患者は六百五十七人だった。
意向調査は全体では、「医療型へ転換」が最も多く二千二百十六床(62・9%)。「未定」は九百九十四床(28・2%)で、国が削減後に新設予定の新型介護老人保健施設を含む老健施設への転換は二百一床(5・7%)だった。
五年後には全廃となる介護型は50・5%が「転換は未定」とし態度を保留。「医療型への転換」が27・3%、「老健施設への転換」は15・2%だった。
この結果について県療養病床協会の松岡政紀会長は「療養病床は慢性疾患を抱える高齢者に必要な医療として制度化された背景がある」と指摘。「患者を目の前にし、療養病床の整備に多額の投資をしてきた医師たちは、急に『ほかの施設に転換を』と言われ戸惑っている」と説明する。
調査では、県内の療養病床に入院する患者の状態も明らかになった。
医療区分別では、筋ジストロフィーや肺炎などを患う区分2の患者が最も多く千六百九十四人(51・3%)。人工呼吸器が必要など最重度の区分3は五百七人(15・4%)だった。退院対象となる区分1の患者は、介護型で57・7%を占めている。松岡会長は「寝たきりでも、口から食事を取れない経管栄養の患者も区分1となる医療区分では、医療の必要度は計れない」とする。国は削減の経過措置で現在区分2の患者の三割も退院させる方針―とし、「このまま削減が進めばさらに多くの患者が退院を余儀なくされる」と心配した。
[ことば]
療養病床 慢性疾患の高齢者が長期に入院する病床。国は医療費抑制の目的で2011年度末までに全国に25万床ある医療型を15万床に削減し、13万床ある介護型は全廃する方針。そのため06年7月から療養病床に「医療区分」を導入し、「医療の必要度が低い」とみなされる区分1の患者に病院が費やす費用より極端に低い診療報酬を設定した。区分1の患者が入院する療養病床は経営できない仕組みになり、患者の入院制限や退院を促す動きが出ている。
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