ボクシング愛にあふれた日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-10-11

[]試合結果

いやー、胃が痛くなるような試合でしたね。

初回、重心をかなり低くしてガードを固め、内藤選手にとにかく張り付いていこうとする大毅くん。これは言わば想定内の作戦でしたが、正直に言うと、ひょっとしたらビビってそんなに前へ出られないかも、と予想してた部分もありました。大毅くんのハートは僕が想像するよりも強かったみたいです。

こういうふうに距離をつぶされると内藤選手も思うようにパンチが出せないようでした。大毅くんのガードも意外と強固だったみたいで、まずはガードの外側からテンプルあたりを狙って攻勢をかけます。

試合が決まった時、僕は「しょっぱなからチャージを繰り返して泥仕合にし、見かけ上の「大善戦」を演出するんだろうな」*1とか「突進とクリンチを繰り返して見かけ上の「大健闘」を作り出すんじゃないでしょうか」*2と予想しており、序盤2ラウンドを見て実際にそういう展開になるかも、と危惧していました。しかし、3ラウンドからは開始すると同時に内藤選手が強引かと思えるほどテンポアップして攻勢をかけました。難しい試合になりそうなところで、強引にでもペースを握っていくところにベテランの上手さを感じました。ここまでほとんどガードしかできなかった大毅くんも応戦せざるを得なくなりましたが、そこでパンチを振ることがまた隙をつくる結果となり、クリーンヒットをもらい始めます。内藤選手はこの回から意識的にパンチを上下に散らし、技術の差を見せました。

ただ「クリーンヒット一発でも入れば大毅くんの心が折れるんでは?」なんて予想もしてましたが、温室栽培の大毅くんとはいえ、そこまで弱々しくはなかったみたいですね。どうもアンチ亀田の気持ちが強すぎて過少評価していたみたいです。しかし、あのクリンチされるたびに首をひねっていたのは何なんでしょうか?そういう面ではこれまでラクな試合しかしてきた分、ちょっとしたことで集中力を乱されるところがあるのかもしれないですね。

さて、内藤選手が3ラウンドに攻勢をかけてから大毅くんもそれほど前に出れなくなり、両者の間に隙間ができるようになりました。この「間」のおかげで内藤選手は大毅くんの動きをよく見てパンチを出せるようになり、ヒット率も上昇しはじめました。4ラウンド終了時の採点では3者ともに内藤選手を支持。

5ラウンドでは、採点の不利をしった大毅くんが若干手数(亀田のアラレを含め)を増やしますが、有効と言える攻撃ではありませんでした。逆にゴング間際にコンビネーションをまとめられる。しかし、大毅くんはこれでも弱気な顔を見せないのでやはり心身ともタフネスは立派なものがあると思います。内藤選手戦前に「絶対に油断しないようにする」とは言っていましたが、温室育ちの大毅くんがここまで自分のパンチに耐えるとは予想していたでしょうか?

とはいえ、ペースは完全に内藤選手に傾き、ブロック一辺倒を捨てて大毅くんが打ち合いに出てきたことで、内藤選手クリーンヒットが次々と当たる場面が多くなってきました。大毅くんも若干ダメージと疲労があるそぶり(特にボディーは嫌がってるみたいでしたね)を見せていたので、僕は6〜7ラウンドにはそろそろ終わるかな、とも予想していました。

大毅くんのオールバックが乱れて「ご乱心の若様」みたいになってきたのもこの辺りですね。

しかし、3ラウンドに大毅くんのパンチでカットしていた内藤選手の右眉からの出血が激しくなるや、ここに勝機を見出したのか、大毅くんの動きに再び活力が戻ってきました。いい意味で「これが若さか」という感じです。ほんとにボクシングって何があるかわからないですね。再び距離を詰めだした大毅くんに対して、内藤選手はやや当てにくそうにしていた感じがしました。

それでも8ラウンド時点の採点で内藤選手が断然有利。大毅くんは攻勢を強めますが、焦りからかチャージも多くなります。これに対して怒りをあらわにする内藤選手。9ラウンドにまず上からのしかかるようにされたことで怒声をあげ、その後には投げ飛ばされました。この辺りから試合に不穏な雰囲気が漂いはじめました。そして、ロープ際でもつれ合って倒れたところで内藤選手が大毅くんの後頭部をこづく行為に。なんと最初の反則は内藤選手ということになってしまいました。もう、ここで僕は胃が痛くなってしまいましたね。「ああ、もう酷いタイトルマッチになった」と。

試合予想では

しかし、内藤選手のペースを乱すことを目的にしたラフな攻撃はおおいにありうるでしょう。個人的には反則すれすれというか、反則そのものを仕掛けてくるんじゃないかということを恐れています。内藤選手はとにかく平常心を忘れないで戦って欲しいですね。

と、書きましたが、一番恐れていた事態ですね。相手の反則に取り乱さないようにすると心に決めていた内藤選手が冷静さを失ってしまうくらいですから、よっぽど頭にきてたんでしょう。しかし、反則は反則。この反則後もムキになってパンチを振るっているようにみえ、ちょっと怖かったです。

10ラウンドはもみ合いの多い展開でしたが、インターバル宮田会長から「ワンツーでいい」というアドバイスをもらったことで効を奏して、11ラウンドには冷静な試合ぶりを取り戻したようでした。一方の大毅くん、体力の限界もあったのかもしれませんがもみ合いになれば内藤選手を引き倒すシーンがありました。実況が「つぶして時間をかせぐ内藤」と言ってたのはなんだったんでしょうか。僕の目には大毅くんが首投げをしかけていたようにしていたんですが…。

そして魔の12ラウンド――

このラウンド開始直後は大毅くんも気合の入った表情で打ち合いを挑み、9〜11ラウンドの胃の痛くなる展開を吹き飛ばす内容を期待させたのですが、開始30秒で再びもみ合い。ここでレフェリーが大毅くんに減点を与えると、完全に切れてしまったのか、再開直後に故意のエメラルド・フロウジョン……。もう俺吐きそう。再開後に今度は腰投げ。もうこれで反則負けでおかしくなかったですが、最終ラウンドだったこともあるのか、レフェリーは続行を許可します。反則負けなら反則負けで、後味はもっと悪かったかもしれません。その直後には内藤選手がチャージして押し倒し、完全に泥仕合の様相。そうした騒然とした雰囲気の中で終了ゴングが鳴りました。

リング上をのしのしと歩き回り、ファンを煽る内藤選手。コーナーに駆け上り雄叫びもあげます。そういう内藤選手の姿に野性的な魅力を感じたことも事実ですが、やはり先に反則を犯してしまったことやその後も冷静さをなかなか取り戻せなかったことは今後の反省材料となるでしょう。

12ラウンドに大毅くんに3ポイントの減点があったこともあって、判定には記録的大差がつきました。また、亀田三兄弟に初黒星*3をつけた功績も大きいものです。しかし、「国民の期待」はクリーンな内容で亀田家をやっつけることだったのではないでしょうか。そういう意味では失望がなかったといえばウソになるかもしれません。

もっとも内藤選手を暗黒面に落とすほどの亀田家のラフプレーと、そして彼らの人間性(の欠落)を褒めるべきなのかもしれません。僕もタイトルマッチという場であるべきかどうかはさておき、亀田家と日本のトップ選手は戦うべきだと思っていたのですが、今日の試合を見ると、ボクシング界は亀田家に関わらないのが吉」と思わざるを得ません。内藤選手にはラフプレーに付き合ったことに対する苦言よりも「お疲れ様でした」と言った方がいいかもしれませんね。なんにしても、次男についてコミッションは何らかの制裁を加えた方がいいと思います。

1994年薬師寺vs辰吉2000年畑山vs坂本とは明らかに別の次元に移行しつつある2007年ボクシング、という気がします。



これが最後のエントリになります。

この日記で最後に取り上げる試合がこういうふうになるのも僕らしいかな*4

でも、きっと時が来れば帰ってくると思います。

さようなら。また来世!

楽観主義 楽観主義 『酷い試合でしたね。度重なる反則が無視されて大毅選手の腕が上がってしまうのではとハラハラしっぱなしでした。もうこれで亀田さんたちとは距離をおいて本当の防衛ロードを歩んで欲しいです。でもそしたら逃げたなどと言われるのでしょうね・・・。ゴキブリ並みの生命力は彼らの厚顔無恥さでしょうから。』 (2007/10/11 21:57)

Jonah Jonah 『追記したエントリにも書きましたが、「亀田家には関わらないのが吉」なのかもしれません。
でも日本の選手が戦わなければ、亀田家は潤沢な資金を武器にどんどんタイトルマッチを行いそうですね。それも困るのだが…』 (2007/10/12 00:13)

gerling gerling 『せめて亀田戦だけでも、と思っていたので感想が見れてうれしいです。』 (2007/10/12 00:15)

stonco606 stonco606 『こんばんは。
5万円払ってクソ試合を観戦してきました(笑)
でも私はアンチ亀田というよりは内藤ファンですので、行ってよかったです。
やっぱり、「世界に挑戦」自体が選ばれた人間でなければならぬ、そんな思いを強くしました。
それはともかく・・・戻ってきてくださいね。できればはてなダイアリー希望(^_^;)』 (2007/10/12 00:18)

m 『これでやはり最後ですか。残念です。ひとまずお疲れ様でした。
また復活される日を楽しみに待っています。』 (2007/10/12 00:29)

HL HL 『チケットを買いながらも都合がつかなくてTV観戦になってしまいました

まぁ・・・、内藤選手が要らない怪我を負ってなければいいなーと
実況は全てギャグでしたね

しかし、覚悟はしてましたが後味悪いなぁ・・・

お疲れ様でした
またいつか』 (2007/10/12 00:59)

chanbara chanbara 『こんにちは。ボクシングのことはあまりわからないのですが、Jonahさんの政治・社会系(そしてボクシング)のテキストはとても楽しく、ためになるお話がたくさんありましたので残念でなりません。ご自身が決められたことですので部外者の私がどうこう言うことではないのですが、Jonahさんの過去のテキストにブログをたたむほどの問題がどこにあったのか私には正直よくわかりません。どこかのバカがしょうもないイチャモンをつけてるんじゃないかと邪推してしまった程です。

おつかれさまでした。またどこかでJonahさんの文章に会えることを楽しみにしております。』 (2007/10/12 01:16)

shin shin 『これで最後のエントリだそうですが、初めまして。
こっそり愛読させていただいておりました。
ここ数年、短絡的かつ殺伐としたネット言論の方向性が自分の肌には合わないと感じることが多く、他人様のblogなどを拝見する度に「やっぱ読まなきゃよかったorz」と後悔することもしばしばでしたが、Jonahさんの日記は私にとって心穏やかに読める数少ないblogでした。
先程まで亀田関連のいろいろな文章をあちこちで読んできましたが、大毅選手に対する冷静な論評はあまりなくて、亀田家大嫌いの私でさえ胸が痛むような言説のオンパレードにちょっと辟易としていたのですが、やはり今回もJonahさんの日記を拝読してなんだかホッとしているところです。
亀田家の一連の発言はほんとにひどいですが、「ひどいことを言った亀田家には何を言っても許される」というようなメンタリティーは、つまるところ自らを「亀田化」するように思えてしまい、私は抵抗があります。
だから本心かはともかく最後に大毅選手へのある程度の評価を示すことで、相手の下品な土俵に降りることを踏みとどまった内藤選手の振る舞いには大いに拍手を送りたいし、Jonahさんもまた最後までJonahさんのバランスなんだなぁ、とちょっと嬉しくなってしまいました。
とにかく最初で最後のコメントですが、長文ですみません。いつか再開、そして再会の日が来ることを願っております。お疲れ様でした。』 (2007/10/12 01:57)

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