国民年金保険料を着服した元職員の刑事告発を見送る方針を明らかにした大阪府池田市の倉田薫市長は9日、社会保険庁に対し、改めて「告発しない」と正式に回答するとともに、「発覚当時はなぜ(刑事告発を含む)このような指導はなかったのか」などと社会保険庁の対応を批判した異例の質問状を大阪社会保険事務局に提出した。一連の横領・着服問題では、舛添要一厚生労働相の発言が地方自治体に波紋を広げたが、新たな対立の“火種”になる?
苦情300件 HPでは陳謝
池田市では平成14年6月、元職員が国民年金保険料約42万6000円を着服したとして諭旨免職としたが、刑事告発はしなかった。
自治体職員による国民年金保険料の横領・着服問題が発覚し、社保庁は今月2日、公訴時効(発生から7年)が成立していない池田市などに対し、告発を含めて厳正に対応するよう検討を要請した。
これに対し、倉田市長は9日付の回答で「当時の処分は甘かったのではないか、という見解があるかもしれませんが、それは今だから言えること」と指摘。「(諭旨免職は)当時の社会保険事務所の対応状況や社会情勢などを考慮して下した」と処分の妥当性を主張し、着服を証明する書類が既に廃棄されているとして改めて告発する考えはないとした。
さらに倉田市長は、事件発覚当時の社保庁の対応に対する質問状を提出。諭旨免職を決めた際、市が社保庁に報告したと言及し、「(当時は)なぜ今回のような指導がなかったのでしょうか」などと異例の質問を投げかけた。
一方、同市が刑事告発をしない方針を打ち出したと報じられた今月5日以降、市への苦情の電話やメールは9日までに約300件寄せられている。「司法に裁きを委ねるべきだ」「池田市民として恥ずかしい」などという内容で、中には「(免職した職員の)退職金を返還させろ」などというメールも。
倉田市長は同日付の市のホームページで「ご心配、ご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げる」と陳謝した。
一連の横領・着服問題では、舛添氏が「市町村は社会保険庁よりも信用ならない」と発言し、鳥取県倉吉市長や東京都武蔵野市長らが抗議。これに対し舛添氏が「小人の戯(ざ)れ言」と述べたことから、市町村からの反発が広がった。
(2007/10/10 7:42)
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